進化するECビジネス

<進化するECビジネス>ビジョンメガネ ネットで視力検査し度付きメガネを購入できるサイト

2002/04/01 16:18

週刊BCN 2002年04月01日vol.935掲載

 ビジョンメガネ(吉田武彦社長)は、インターネットで度付きメガネの販売を可能にしたシステムを開発し、5月に「どこでもメガネショッピング」サイト(http://www.dokodemomegane.com/)を開設する。インターネットで度付きメガネを販売するサイトは世界で初めて。ここ数年、国内メガネ市場は約6000億円の規模から拡大していない状況。同社がシステム開発に踏み出したのは、ネットで気軽に購入できるという新しいマーケットを創出し、成熟した市場の活性化を図るためだ。2-3年内に300億円の売り上げを見込んでいる。

今月から店舗で実証実験
5月に本サービスを開始

 ビジョンメガネの「どこでもメガネショッピング」サイトは、インターネットで度付きメガネを購入できるサービス。パソコンを利用してインターネットにアクセスし、自分の視力を検査することが可能で、ユーザーの視力に適したレンズ度数を自動的に選定する。眼球モデルは、同社の店舗でメガネを購入した約8万人の視力データを分析し、数万種類に分類した。

 ユーザーは、生年月日や性別などの個人情報を入力し、「視力のセルフチェック」と「バーチャルフィッティング」でメガネを購入する。

 「視力のセルフチェック」では、見え方の偏りを4種類の角度の見え具合で測定する「見え方の偏りチェック」、自分の腕の長さだけ離れた位置で画面を見て、どれくらい小さな線まで判別できるかをチェックする「遠くを見るチェック」、パソコンのモニタにできるだけ顔を近づけ、少しずつ顔を離すことで画面上の縦線がはっきり見えたときの距離を測定する「近くを見るチェック」の順番で左右それぞれの目を検査し、視力に適したレンズ度数を算出する。

 用途に応じてレンズの役割や見え方が異なるため、最終的な度数の決定はユーザーがレンズの見え具合をシミュレーションする「見え方のチェック」で確認する。

 「バーチャルフィッティング」では、約1万種類のフレームのなかから気に入ったモデルを選択でき、あらかじめ用意してある年代別の男性モデルと女性モデルの顔写真に加え、自分の写真で試着イメージを確認する。

 写真画像は、スキャンもしくはデジタルカメラのデータを入力することでアップロードする。ユーザーはフレームを選択し、「装着ボタン」で顔写真の上にフレームを装着。フレームに合ったレンズの色や厚みを選択することも可能だ。

 度付きメガネの価格は3000円から。同社の店頭販売価格より20%割り引いた価格で提供するという。商品が手元に届くまでの期間は、通常のレンズで1週間程度、カラーレンズや遠近両用レンズなどの特殊レンズで2週間程度必要。決済方法は、クレジットカードと代金引換で、店頭での受け取りも可能だ。

 サイトで購入したメガネに「よく見えない」、「なじまない」、「期待していた色と違う」などといった不具合があった場合は、代金を全額返金するという。

 4月初旬から全店舗にシステムを入れ、1か月間の実証実験を行い、5月に本サービスを開始する計画だ。

 1997年から「どこでもメガネショッピング」のシステム開発に着意し、99年頃から事業化に向けたプロジェクトを発足。NECと大阪ガスの子会社である関西新技術研究所の2社と共同開発した。

 吉田社長は、「システム開発ができるかどうかは別として、ネットで度付きメガネを販売するという発想は、メガネ業界の企業であれば必ず考えること。だが、視力をインターネットで検査するのは不可能だとして、これまではサービスまで至らなかった。視力検査の知識がなく、インターネットで視力が測れるのではないか、という初心者的な考えでなければできない。当社としても、初心に戻りシステム開発に着手した」と強調する。

 システムを開発した背景には、「メガネ業界の市場規模は約6000億円。ここ数年、市場が拡大していない厳しい状況にあるため」としている。

 市場が成熟している要因としては、「消費者がメガネ店に行くと『買わされるのでは…』という意識と、メガネは高いという認識が強いからだろう。また、コンタクトレンズはもっていても、メガネをもっていない若い世代が多いことや、メガネの買い替えサイクルが長くなっているのも要因だ」と分析する。

 消費者のこうした意識を打破することが、メガネ市場の拡大につながるという。

 実際、メガネ業界では、3000円から度付きメガネを購入できる低価格の店舗を出す取り組みがある。これにより、メガネに向ける消費者の意識が徐々に変化している。

 同社でも、関西地区を中心に、関東や九州地区で約10か所の低価格店舗「マックス・エー」を出店したところ、既存店舗の売上高が対前年比25%増という相乗効果が生まれた。ちなみに、「マックス・エー」は、月平均で売上高が2000万円、来店者数が8000人という状況だ。

 そのため、「どこでもメガネショッピング」は、気軽にメガネを購入できることに加え、消費者の意識を変えることも狙いとしている。

 サービス開始当初は、サイトでの販売が中心だが、システムをファッション関連の店舗やオンラインショッピングサイトなどにASPで提供することも視野に入れている。

 サイトでのメガネ販売については、「サービス開始後2-3年で約300億円の売り上げを目指す」と、新マーケットの創出に意欲を見せている。

COMPANY DATA
ビジョンメガネ

 1976年10月31日に創業。設立は79年11月1日。資本金は7億7200万円。従業員は1112人。
 吉田武彦社長は、清水眼鏡工業所(現シミズメガネ)に入社し、専務取締役を経て、ビジョンメガネを創業した。第1号店は76年11月に出店。84年に関東地区に店舗を出店し、関東への進出を図った。
 00年には、業界で初めて「ISO14001」と「ISO9001」を取得。同年4月に株式上場を果たす。
 同社では、成熟したメガネ市場を活性化するために02年5月からインターネットで度付きメガネの販売サイトを立ち上げる。
 01年度(02年3月期)の売上高は約175億円の見通し。02年度は約200億円を見込んでいる。サイトでのメガネ販売高は、サービス開始後2-3年で約300億円を狙っており、店舗販売に匹敵する規模を見込む。

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