変わるかシステム入札
<変わるかシステム入札>1.依然続く安値入札
2002/04/01 16:18
週刊BCN 2002年04月01日vol.935掲載
日本は電子政府後進国か
情報産業技術への投資額(民間企業を含む)では、日本は米国に次ぐ第2位となっている。それにもかかわらず、電子政府に関する成熟度では「Platform Builders」(プラットフォーム構築者)と評価された。この分野で首位のカナダ、それに続くシンガポール、米国は「Innovative Leaders」(革新的なリーダー)と評されている。電子政府関連では日本は後進国と見られている。この点について、JISAの佐藤雄二朗会長は、「電子政府という分野では、日本は遅れている。とくに地方自治体はウェブ化も全くなされておらず、その遅れは大きい。しかも、政府、マスコミ、われわれ業界の自覚が薄い。今後、どれだけ短期間に上位に追いつくことができるのか」と不安を口にした。
佐藤会長は、官公庁のシステム調達が依然として大手ベンダー中心、ハードウェア偏重である現実に対して、大きく異を唱え続けてきた。「大手ハードメーカーは、ソフト・サービス事業への転換を口にしつつ、相変わらず赤字調達を続けている。これはソフト・サービスを軽視しているからこそ」と、電子政府後進国となった背景に、ソフト・サービスを軽視する風潮があると指摘する。
日本が電子政府導入後進国の汚名を払っていくために、どうあるべきか――。JISAをはじめ、コンピュータ産業に関わる人々にとって重要なテーマである。
今年1月、社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は新春セミナーにおいて、「e-Japan計画がIT産業にもたらすビジネスチャンス」をテーマにパネルディスカッションを開催した。旧・通産省出身で、現在はコンサルティング会社「ヤス・クリエイト」の社長である安延申氏をモデレーターに、東京大学大学院情報学環教授の須藤修氏、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)取締役パーソナルシステム事業部長の橋本孝之氏、フューチャーシステムコンサルティング社長の金丸恭文氏の4人が、様々な意見を述べた。
須藤教授は、「地方自治体がシステムを導入する際、県の職員などの手には負えない。民間との協力が不可欠」と、遅れが目立つ地方自治体の底上げには、民と官の協力体制が欠かせないと指摘した。
モデレーターである安延氏は、「日本の予算は単年度予算。本来3年かけて構築するシステムも単年度で予算を出す必要がある。だからこそ初年度は1円で入札して、次年度、次々年度でその分を回収すればよいといった妙な慣習が生まれる。1円入札でも耐えられる体力のある企業のみが入札に参加する事態となる。こういう仕組みを作ったのはベンダーだけでなく、官の怠慢とそしられても仕方がない」と、問題点を指摘した。
安延氏率いるヤス・クリエイトでは、実際に入札価格にどれだけ開きが出ているかの調査を行っている(図)。
こうした問題を変えていくために、官公庁システムの入札はどういった形態が望ましいのだろうか。本連載では、この問題を研究する識者、システム入札に参加する当事者のディーラー企業などの意見を聞きながら、理想的な官公庁のシステム入札のあり方を考えていく。(三浦優子)
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