実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>4.目論見書を読む(2)

2002/03/25 16:18

 分厚い目論見書のなかでチェックするポイントとして、まずその企業の事業内容を知ることは言うまでもない。この時点では、約束されたわけではない将来の大きな成長分野であるのか、それとも急成長は期待できないが安定した経営が見込める企業であるのかによって、投資の意味合いが大きく異なることを認識するべきだろう。ハイリスク・ハイリターンとローリスク・ローリターンに分けることもできる。さらに短期勝負か中・長期勝負か、という見方もできる。目論見書には、事業のもつリスク情報も記載されているほか、IPOによって調達した資金の使い道も明記される。メーカーなら設備投資、化学、薬品企業などでは研究開発費といった具合に、資金調達が企業の成長にどのようなメリットをもたらすかという判断ができる。さらに、設立年月日、企業の沿革、社長の経歴などを知ることで、より深く理解できる。

 企業の成績表という意味でも、業績を押さえることは必須だ。過去3期分の売上高、経常利益、当期利益、株主資本の推移から、成長企業なのか衰退企業なのかが良く分かる。不景気の影響を受けやすい企業かそうでないか、ということまで推測することも可能だ。業績は単体と連結の2種類があり、通常は連結ベースで判断されるが、子会社が業績の足を大きく引っ張っていることもあり、よく見比べてみると状況は判断できる。本店所在地、社員数、主要な設備の状況などをチェック項目に加えていくと、企業の大まかなイメージというのはつかめてくる。ここまでの内容は主に目論見書の第二部「企業情報」というところに書かれている。さて、問題は投資という観点でどの項目をどのように判断していくかである。これが第一部の「証券情報」。IPOにともなって、何株をいくらの株価で公募(投資家を公に募ること)し、それでどれだけの資金を調達するのかということになる(公募・売出の説明は次回予定)。

 株数が多く、資金調達額が巨額になると、より多くの投資家に買ってもらう必要があるため、一般的に需給(需要と供給)バランスが崩れやすく、証券会社の販売力も試される。このため、主幹事証券がどこの証券会社なのか、ということも資金調達額や公募株数などに応じて投資判断の材料となる。さらには、資本移動というIPOに向けた増資にともなう資本政策も、株価の割高、割安を見る参考になる。IPO前の未公開企業の段階で行う第三者割当増資の発行価格は、企業価値に照らした株価が算出されるため、ここは必ずチェックするべき点と言える。
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