The Project
<The Project ―KDDI egnavigation 開発現場の風景―>第7回 地図で新しいサービスを
2002/03/18 20:43
インターネット・グループのメンバーはそれぞれ、当時社内で「cdmaOne」にGPS機能を搭載、すなわち「gpsOne」と呼ばれていたGPSサービスの詳細について知恵を絞っていた。
「できる、できない、ということはあとで詰めればいい。できたらいいな、を考えてくれ」
そう求められ、大谷宏は、「個人的にやりたいと思うことは……」と切り出した。こんなアイデアだ。
「つねに位置情報がとれるわけですから、歩いているときに、周囲の店舗などのバーゲン情報があれば、信号音とともに知らせてくれるというのは、どうですか。そうすれば、すぐその店に入れる」
「友だちがほしい人同士が近づくと、端末が鳴って教えてくれるとか」
そんなさなかの2001年6月、グループの名称が三たび変わった。携帯電話事業を管轄するau商品企画部が本部に格上げになり、その下に、携帯電話を使った情報配信サービスを担当する「モバイルインターネットビジネス部」が新設された。
GPSサービスの立ち上げにたずさわってきたメンバーたちは、KDDIとしてサービス仕様を検討する「コンテンツ開発グループ」、サービス提供業者の支援の窓口となる「アプリケーション開発グループ」に分かれた。
●娯楽性の高いコンテンツ
そのころ、ある経済紙の1面に「精度10倍」、「誤差10メートル」と大書された「gpsOne」の記事が飛び出した。
その記事のなかでは、「gpsOne」について、サービス開始予定が「10月」、つまり同時期に導入されるNTTドコモの第3世代携帯電話サービス「FOMA」に「対抗する」とされていた。
にわかに世間の耳目を集めることになったが、メンバーたちは黙々と、提供するサービスの候補の絞り込み作業を7月末ぐらいまで続けていた。
「GPSで精度が上がるから、もっとおもしろいことができるはずだ」
大谷の提案でもそうだが、前回、実現できなかった、精度を重要視するようなサービスまで踏み込み、サービスのラインアップがさらに豊富になることに期待が集まっていた。
もちろん、地図を配信するのはぜったいに必要なことだった。しかし、地図では、「あまり真新しさもないし、サービスの広がりがでない」という意見が大勢を占めた。
議論の焦点は、ほかにどういうもの、例えば、娯楽色の強いもの――を地図にどう融合していけるかにあった。そのひとつとして考えられたのが、のちにGPSサービスの方向性を決める「コミュニケーション」への広がりだった。
楠直樹は、こう言う。「コミュニケーションといえば、メールサービスというものが一般的だが、メールサービスは、物理的には同じところにいないんだけれど、『つながっている』という感覚をもたせられる。じゃあ、その意識は、どこから来るんだろうか。こうしたことを考えた」(文中敬称略)
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