Break it! ソフト流通百景
<Break it! ソフト流通百景>36.P&A
2002/03/18 16:18
来年度は直販増加へ
ピーアンドエー(P&A)は、米国のシェアウェアをパッケージ化して日本で販売している。シェアウェアは、パッケージ化には向かないのではないかと思われがちだが、「日本でシェアウェアというと個人が作ったものが主流。しかし、米国では個人ではなく、メーカーが作ったシェアウェアが多い。これは米国でのソフト販売が、店頭よりもユーザーに直接販売する形態が多いことによる」と、同社の池田勇二COO代理兼営業統括部長は説明する。
米国のシェアウェアは、店頭ルートではなく、直販で販売することを想定して開発された製品であることが多いのだ。
米国には、日本であれば十分パッケージ化するに値する製品でありながら、市場の特性に合わせてシェアウェアという形態で提供されているソフトが多数ある。
それは、同社のパッケージとして販売しただけで50万ユーザーをもつ、「Paint Shop Proシリーズ」のようなヒット商品が生まれていることでも明らかだろう。
P&Aでも、直販で販売している商品もあるものの、「やはり初心者ユーザーは店頭で商品を購入する傾向がある。しかも、宣伝効果が大きく、サイトライセンスとして販売していくためにも、店頭の目立つ所にパッケージを置いて商品を認知してもらう必要がある」と、店頭で商品を売ることの有用性は十分にあるという。直販と店頭ルートの比率も、年々店頭ルートの方を増加させてきた。
しかし、来年度は「直販ルートの割合を大きくするよう、方針を変更する予定」だという。
これは、「店頭市場は厳しさを増している。店舗統合といった動きも出ており、これにより在庫商品の返品が増える可能性もある。そうなると我々メーカー側の収益もかなり厳しくなるわけで、これに対処していくためには、収益性の高い直販の割合を増やさざるを得ないという結論となった」ためだ。
市場環境が厳しいなかで収益を確保するための施策として、ソースネクストに代表される商品タイトル数の増加、アドビシステムズのように単価の高い商品を売るといった方法がある。
P&Aでもこれらの方法を検討したが、「市場環境が厳しくなれば、メーカー間競争も激しくなる。どちらの方法も難しいのではないかとの結論に至った」ために、直販の拡充を行うこととなった。
直販を行う商品は、グラフィックスソフトのなかでもプラグインソフトのようにプロ向けで、利用者がある程度限定されているソフトなど、直販で販売する方が適していると判断したものを扱う。
「プラグインソフトを置いている店舗は、大規模ショップなど一部の店鋪に限られている。そのうえ、米国では直販されているためパッケージ、カタログなどを新たに作らなければならず、その分のコストがかかる。市場規模、コストから考えても、直販の方が適している製品もある」
同社では、来年度は直販ビジネスの売り上げで50%増、店頭ビジネスはPaint Shop Proのバージョンアップがあるため20%増を見込んでいる。
市場が厳しいなかで、この目標を達成し、メーカーとして収益を確保していくためには、これまでのように1つの販売チャネル、1つの施策だけに頼るのでは十分とはいえないだろう。
厳しい時期をソフトメーカーは迎えようとしている。(三浦優子)
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