Skill upへの挑戦 これからのIT人材育成
<これからのIT人材育成>第11回 クリーク・アンド・リバー、リーディング・エッジ
2002/03/18 16:18
クリエイターに特化し
プロの人材を派遣
■制作会社も登録 例えば、ゲームのソフトハウスが新たな企画を立ち上げるとする。作品全体のコンセプトが完成し、制作スケジュールが組まれ、予算も確保できた。しかし人員が足りない。このような場合どうするか。通常は、人材派遣会社に依頼し、短期契約のエンジニアを派遣してもらうか、事業拡大の契機と割り切り、人員補充をする。
しかし現実には、派遣要員のスキル不足、絶対数が不足している。新人を採用しても長期間の教育を要する。
このジレンマに目をつけたのが、フリーランスのプロフェッショナルのみを派遣するクリーク・アンド・リバー社だ。
現在の登録数は約1万7000人と600の制作会社だ。クライアント企業がこの人材ネットワークを活用する場合、クリーク・アンド・リバー社の「エージェント」、「プロデューサー」がクライアントの案件ごとに制作方法や作業体制のインフラ作りを行う仕組みになっている。
登録人員および企業が通常の人材派遣会社と異なり、コンテンツ制作のプロフェッショナルである点は、クライアントにとって有り難いが、クリーク・アンド・リバー社にとっては、人気のあるクリエイター(制作会社)が偏りがちになる、というマイナス面もある。
もちろん通常は、クリーク・アンド・リバー社がクライアントに紹介する段階で割り振りを行うのだが、取り引きが度重なるクライアントはクリエイター(制作会社)を指定するようになるのである。
■独自の教育専門コース
人気のある登録者(企業)の報酬は高額となる点、フリーランスのプロフェッショナルにとっては営業活動を一括して同社に任せているため非常に有利だが、一方で登録者(企業)間の格差ができることは否めない。
さらに、制作現場のデジタル化に伴い、クリエイターにとっては絶えず最新の機材を揃え、バージョンアップに対応した制作環境を保つことが必要であり、経済的に困難なこともある。結果、格差は拡がる一方となってしまう可能性がある。
そこで同社では、新機材のバージョンアップやその使い方を習得するトレーニングセンターを開設し、最新のバージョンに触れる環境を整備。各クリエイターの生涯価値を最大化することを目指している。1999年秋から社内にトレーニング&ワーク複合施設「C-place」を日本SGI、ノンリニアビデオ編集機器のアビッドジャパンの協力を得て開設している。
また、独自の教育専門コースPEC(Professional Education Center)においては、DTP、ノンリニア編集、ウェブデザインなど、実際の業務に直結した長期、中期、短期のコースを揃えている。
■Linux技術者にも対応
PECのトレーニングコースは、「トライアルセミナープログラム」、「ショートトレーニング」、「デビュートレーニング」、「アドバンストトレーニング」、「トライアルプロジェクト」、「ターゲットトレーニング」など。主にデジタルコンテンツクリエーションの最新技術動向に関するトレーニングを、登録者はレベル(あるいはニーズ)に合わせて受講することで、自らのスキル向上を図ることが可能となっている。
これまでIT関連企業の人材教育戦略で指摘されてきたように、クリエイティブエンジニアといえども、制作の知識、技術スキルのみが武器では先細りする。PECのトレーニングコースやセミナーでも、「次世代クリエイターの必須のスキルとなるであろうマーケティング知識とプレゼンテーションスキルの向上が必要となる」(塚田祐子・クリエイティブ・ワーク・ステーションプランニング・ディレクター)という。
PECのトレーニングコースは、基本的にベンダー資格やユニバーサル資格取得を目指すものでないことがわかる。
というのも、あくまで即実践に役立つ実用スキルの習得や知識の吸収が最重要との前提に立っているからである。
これは、コンテンツクリエイションという特殊分野ゆえのトレーニングという要因も絡む。
しかし、ウェブサービスの普及は、今後コンテンツ制作とウェブのシステム全体のデザイン、設計、開発などの基幹業務との連動が考えられる。このようなニーズに対応するために、ファミリーカンパニーとして別会社「リーディング・エッジ社」を設け、対応を行っている。
ここでは、JavaおよびLinuxを中心とした最先端のオープン系ITエンジニアを派遣することが可能となっている。
とくにLinuxエンジニアの派遣については、同社とLinux認定資格機関LPI Japanとの密接な関係により、強力な提供企業であるといえる。
単なる人材派遣ではないところが、クリーク・アンド・リバー社の大きな特徴となっている。
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