WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第97回 IBMパルミザーノ新CEO

2002/03/18 16:04

 02年3月1日、IBMにサム・パルミザーノ新CEOが誕生した。9年間の長期政権でIBMを業界でもトップクラスの高利益企業に復活させたルイス・ガースナー氏に替わったパルミザーノ新CEOの第一声を、IBM社員、IBMパートナーはいろいろな期待をもって待っていた。

IBMはニッチプレーヤー

 その第一声は、「IBMは巨大なITサービス会社といっても、今や世界の当市場規模は4500億ドル(59兆円)と巨大に膨れ上がった。IBMの01年12月決算で、IBMグローバルサービス部門の売上高は350億ドル(4兆5500億円)で、シェアは8%にも満たない。従ってIBMはITサービスのトップといっても、ニッチプレーヤーの1人に過ぎない。IBMにとってITサービスを拡大するチャンスはいくらでもある」というものであった。

 IBM新CEOは自社を「ニッチ」と決めつけることで、CEO就任時冒頭から世界の全社員36万人に向かってはっぱをかけたのだ。

 パルミザーノCEOは前任者ガースナー氏がトップになった時のどん底時代とは異なり、隆盛期にその座についた。

 パルミザーノCEOはガースナー前CEO誕生の翌94年、現在のグローバルサービスの前身「インテグレーテッド・システム・ソリューションズCorp.(ISSC)」のトップに就任している。

 当時ISSCの売上高はきわめて小さく3億5000万ドルであった。当分野のトップEDSに売上高で大きく先行されていた。しかし、パルミザーノ氏は2年間でEDS売上高を追い抜き、ITサービスのトップとなってガースナーIBMの基盤をつくり上げたことが評価されて、ガースナー氏に後任を託された。

 この経緯とこれからの抱負について、パルミザーノCEOは次のように説明した。

 「自分がISSCのトップに就任した時と比べ、IBMサービス売上高はちょうど100倍になった。しかし、世界のITサービスは経済不況でも世界的に伸び続けているため、IBMはニッチになってしまった。第2位EDSも猛烈に巻き返しに転じており、前年は12%も伸びている。巨大なサービス市場をもつ日本でも、IBMは富士通に大きく水をあけられている。IBMも努力しないといつまでもトップに居られるという保証はない」

 そしてIBMのサービスシェアを20%に近づけ、不動のトップを確立するために世界のサービスパートナー企業との連携を次のように社員に訴えた。

 「現在IBMサービス要員は15万5000人だ。当社サービス売上高を20%シェアに上げるには、さらに10万人以上のSE、コンサルタントの増員が必要だが、こんな数の高度なエンジニアは簡単には集められない。しかし世界には人材がたくさんいる。どこにいるかといえば、ITサービス会社にいるのだ。従って、IBMは今後も世界の有力ITサービス会社との提携戦略を鋭意推進していかなければならない。パートナー会社の有能な社員をIBMは引き抜いてはならない。なぜなら、パートナーとの共存だけがIBMの目的を実現してくれるからだ」(中野英嗣●文)

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