Skill upへの挑戦 これからのIT人材育成
<これからのIT人材育成>第10回 マンパワー・ジャパン
2002/03/11 16:18
GLCを利用した学習でSE・プログラマーを養成
■ 「ITパワー本部」マンパワー・ジャパンでIT関連の人材派遣を担当するのは「ITパワー本部」。企業単位、企業の部署単位、あるいはプロジェクト単位で人員の派遣を行う。現在登録している人数は約7000人。
人員のスキルは多岐に渡る。SE、プログラマー、ヘルプデスク、ユーザーサポート、ネットワークエンジニア、評価要員、回路設計、テクニカルライティング、OAインストラクション、カスタマーエンジニア、セールスエンジニア、DTPオペレーション、CGオペレーション、ホームページ作成、研究開発・実験分析、トレース、CADオペレーション、システムコンサルティング――など。
そのうち、全体の60%を占めるのはSE・プログラマー、次に多いのがカスタマーサポートやテクニカルサポートを行う人材だという。
ITパワー本部・根岸浩本部長は言う。「昨今、SEやプログラマーの派遣では金融業界からの引き合いが非常に多い。昨年9月ごろは銀行の統合が活発だったために、大量の人員が必要だったようだ」。
銀行の統合業務は煩雑を極め、当初のスケジュール通りには進んでいないらしく、現在でも金融関係の企業からSE、プログラマーの派遣ニーズが最も多いと言う。
■高度な専門知識を求める
最近の傾向としては、単なる技術志向の人材ではなく、業界特有の知識や経験ももっている人材の要請が多い。例えば、金融関連企業への派遣には、金融の知識・経験が求められるという。高度なスキルをもった人材が求められる傾向にあるわけだ。
しかし、「そういうニーズを満たす人材は少ない」(根岸本部長)のが現状だ。ITパワー本部に登録している約7000人のうち、IT関連技術・知識・経験において、プロジェクトマネージャークラスのスキルをもつのは、日本人よりも中国や米国に国籍をもつ人材だ。とくにネットバブルが崩壊後、シリコンバレーから日本に職を求めてやって来た人材の質は高い。
マンパワー・ジャパンでは、派遣登録人員のスキル向上を支援する目的で、いくつかの人材育成システムを採用している。
ネット上で自主的に技術と知識を学習できる「グローバル・ラーニング・センター(GLC)」もその1つ。
マンパワー・ジャパンの登録者なら、受講登録完了後3営業日以内でIDとパスワードが発行され、いつでもどこでも自分のペースで学習が行える。
コース数は全部で2000(英語が基本)あり、日本語化されているのはそのうち150程度。アドミニストレータ向けにマイクロソフトのワードやエクセル、アクセスなどの基本的な使用方法を学習できるカテゴリと、ITの専門分野に特化した「Teck Track」(英・日・独・仏・西語)、営業や経理などビジネス分野のトレーニングカテゴリに分かれている。メインは「Teck Track」で、利用者の多くはマイクロソフトの認定資格取得に向け受講を行っているという。
また、全国17か所の拠点にITパワーテストセンターを設置し、GLCで習得したスキルの資格認定試験を受けることができる。
「認定資格試験で最もニーズが多いのは、マイクロソフトのベンダー資格だ。テスト受験生の85%がマイクロソフトの試験を受けている」(根岸本部長)。
ITパワーテストセンターがサポートするベンダー資格は、現在、国内で実施されているベンダー資格をほぼカバーしている。そのなかで人気が集中するのは、マイクロソフトをはじめ、オラクル、サン・マイクロシステムズなど、一部に限られている。
■短期雇用が中心
人材派遣会社を活用するIT企業のなかで、長期雇用を考えているケースはごく稀であり、「その多くはプロジェクトごと、というように短期的な人員不足を補うことを目的としている」という。
商談をまとめ、システムの全体的な設計・スケジュール管理を行うのは案件を受注した企業であり、その後、実作業は子会社のソフトハウスあるいは下請け企業に流れる。その段階で必要になる、いわゆる「力仕事」の面を派遣人員で補うというケースが一般的だという。
顧客企業側の派遣人員に対する要望は、「スキルは高いが、賃金設定は低く、しかも大量に欲しい」(根岸本部長)というものが多く、派遣企業と顧客企業との間で、需要と供給のすり合わせが必ずしも完全に一致しているわけではないのが現状だ。
顧客企業側は、プロジェクトごとに必要な人員数は異なることが多いことから、「一時的な雇用で済むならば」と、人材派遣を積極活用することが多い。
そういう意味では、需要と供給のニーズはマッチしているといえるだろう。課題は、派遣要員全体の専門性がどこまでレベルアップできるかどうかにあるのではないだろうか。
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