Break it! ソフト流通百景
<Break it! ソフト流通百景>34.マイクロジスティックス(下)
2002/03/04 16:18
米国流と日本流
マイクロジスティックスは、パソコンやプリンタなどハードウェア購入者に対し、ソフトを低価格で提供したり、店頭でパソコン購入者に対し低価格でソフトを購入できるサービスを提供している。いずれも「ユーザーは低価格で商品を購入できる」点がセールスポイント。同社自身が高収益を得るビジネスモデルではない。そこで、ビジネスを行うには、ローコストオペレーションを行う体制が不可欠になる。「事業の一部分だけを見れば、ソフトバンク・コマースと競合してくるということになるのだろうが、本質的には決して競合とはいえない」(日本法人・阿部川久広社長)
全ての面で競合する企業は、日本だけでなく全世界的にも存在しない。これは同社のビジネスがローコストオペレーションでなければ成り立たないことと無関係ではないだろう。
日本法人については、2004年には年商10億円の売り上げを目指しているものの、従業員は今年末で5人程度とし、最小限のスタッフでビジネスを行っていく計画だ。
それだけスタッフの数をしぼったとしても、米国に比べてコストが割高になる部分があることは否めない。そんな日本で、ビジネスを展開していくことに問題はないのだろうか。
「確かにコストで比較すれば、日本の方が若干コストがかかることは確か」と、阿部川社長も認めている。
米国で成功している流通会社が日本に進出しても事業を拡大できない背景には、コストがかかる日本独自の事情がある。米国で成功したビジネスモデルをそのまま日本に持ち込んだだけではうまくいかないのである。
マイクロジスティックスジャパンでも、「米国で成功したアイデアを生かしてはいるものの、実際に細かい部分は日本の実態に合わせて展開する。日本ならではのパターンをどれだけ作っていくことができるかが重要なカギとなる」と、アイデアとしては米国発であるものの、それをカスタマイズして日本流に展開することに力を注いでいる。
さらに、「当社は短期的視野だけでなく、長期的なビジネスを行っていくことが本分。パートナー各社とも長いおつきあいをしていくことを目指す」と、将来を見据えて協調関係をとっていくと話す。
昨年の日本法人設立から短期間で、米国で実施しているパソコンメーカーと連携した新しい形のOEMビジネス、リテールを活用したビジネスはスタートしている。
まだ日本で展開していない企業とタイアップしたプロモーション、自らパブリッシャーとして事業を行うことについても、すでに準備を進めている。
「例えば欧州では、ハリーポッターのキャンペーンに合わせて、あるメーカーのプリンタを購入するとハリーポッターの図柄をプリントできるソフトを提供するキャンペーンを行った。このソフトは、当社がパブリッシャー的役割を担って、開発会社に依頼してソフトを作ってもらうことも可能で、ハードへのOEM、店頭支援、プロモーション、パブリッシャーという4つの事業が有機的に連携し、ビジネスとなっていく」という。
日本の実状をふまえながら、事業展開のスピードはあくまで米国流。日本企業に比べてきわめて迅速に新規事業が立ち上がっている。
同社の展開を見ていると、流通というリアルビジネスにも、インターネットを活用したバーチャルビジネスを組み合わせていくことの可能性があること、すでに完成されたと思われる流通にも新しいチャレンジの可能性があることがわかる。(三浦優子)
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