どうなる? PCリサイクル
<どうなる? PCリサイクル>17.実質審議、終了
2002/03/04 16:18
溝をどう埋めるか
家庭用パソコンリサイクルの報告書には、回収率の数値目標を明記せず――。来年10月の実施を目処に、産業構造審議会(産構審)パソコンリサイクル検討会が最終的にまとめた家庭用パソコンの報告書案は、結局、メーカー側とほかの委員との意見の溝を完全に埋めることはできなかった。とくに、回収率が上がらない危険性と、制度実施後も自治体が不燃ゴミや粗大ゴミとしてパソコンを回収し続けなければならない要素が残ることに、委員側は強い懸念を示す。2月21日に開かれた第6回産構審パソコンリサイクル検討会で、実質的な審議は終了した。4月までに報告書をまとめ、その後、①メーカーの回収体制の構築、②販売店、自治体との調整、③消費者に対する周知――にそれぞれ半年ずつを費やし、早ければ1年半後の2003年10月からリサイクルが始まる。
最後まで対立していた料金の徴収方法は、①新品パソコンについては、販売時に料金を上乗せして販売する、②すでに販売した既販パソコンについては、排出時に徴収する――ことで決まった。「排出時徴収」で統一するメーカー側と、これとは全く逆に、すべて「販売時徴収」で統一することを求める自治体側との“折衷案”である。
自治体側は、「既販パソコンについては、制度実施後も自治体が不燃ゴミや粗大ゴミとして回収せざるを得ない仕組みだ。メーカーが用意した回収ルートを排出者(消費者)が必ず選択するという担保がない。こういう形で報告書がまとまるのは、非常に残念である」(全国都市清掃会議・庄司元調査普及部長)と不満を示した。
回収率が明記されていない点も委員側から鋭い指摘がなされた。毎日新聞の横山裕道論説委員は、「既販パソコンが家庭から出尽くすまでの今後約10年間は、実質、排出時徴収を引きずるわけで、回収率が悪く、不法投棄の懸念が厳然と存在し続ける。この点の改善策を報告書に盛り込むべき」と注文をつける。
新品パソコンの排出量は、07年頃から増え始め、11年には既販パソコンの排出量より増える見通し。だが、既販パソコンは、少なくとも今後10年以上、だらだらと排出が続く見込みだ。(図参照)
生活環境評論家の松田美夜子氏は、「今後1年ごとに、どれだけの回収率を達成したかを評価する仕組みが必要。消費者に原因があるのか、メーカーの怠慢なのか、制度そのものが悪いのか、今後も定期的に再評価すべき。回収率の合格ラインは80%以上」と指摘する。
これについて、座長の永田勝也・早稲田大学教授は、「メーカーが、新品パソコンの販売時徴収に踏み切ったことは十分評価できる。既販パソコンは販売時徴収だが、結果として皆が納得できる仕組みができた。最初から100%完璧なものをつくるのは無理。矛盾も踏まえながら、全体的な流れとしては満足いく報告書に仕上がっている」と、メーカーと自治体や有識者との“歩み寄り”と“相互協力”を促した。
電子情報技術産業協会(JEITA)の佐野角夫氏は、「審議会ではメーカーを代表する委員が2人なのに対し、メーカー以外の委員が16人もいる。苦労して業界の意見をまとめてきても、審議会で一蹴されることの繰り返しで、何だか被告席にいるような思いもした。だが、誠心誠意、委員の方々と議論を尽くし、公正な報告書ができたと満足している」と、今後は制度立ち上げに専念する考えを示した。(安藤章司)
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