どうなる? PCリサイクル
<どうなる? PCリサイクル>16.難しいリユース
2002/02/25 16:18
短い製品サイクルがネック
耐久消費財でなければ、リユース(中古利用)は難しい――。こう話すのは、中古OA機器販売を手掛けるテイクオフ営業技術部営業3課・北川豪志課長だ。中古利用は、リサイクルの基本である「3R」(リサイクル、リデュース=排出抑制、リユース)の重要な柱の1つだ。「3Rを本気で考えるなら、丈夫で長もち、きちんと保守サービスが受けられる仕様にすることが大切。今、どのパソコンメーカーも3-6か月単位で型式を新しくしており、製品寿命も短くなる傾向にある。このままいけば、パソコンはとても耐久消費財とはいえない、使い切り製品になるような気がする」と話す。
中古販売しやすい耐久消費財の代表は、何といっても自動車である。自動車は中古販売の仕組みがしっかりできあがっている。OA機器分野でも、複合機、カラーコピー・プリンタなどは、比較的中古販売しやすい。テイクオフでは、こうしたOA機器以外にも、医療機器や理化学機器、測定器なども取り扱っている。
一方、「オフコン機は、今でも高く売れる場合がある。1988年製の富士通『シグマ』が出てくれば、定価相当の150万円で売れる。保守用の代替機としてメーカーや販社が欲しがるからだ」という。
テイクオフでは手掛けていないが、一昔前は国内で余った中古パソコンが海外で売れることもあった。一番の需要先は中国だった。輸送費や税金などを差し引いても、国内での販売価格より高い場合は、商社などが海外へ売りに行く。有価物(産廃ではなく、価値のある商品)として輸出する。
ところが、中国は世界のパソコン生産拠点となり、パソコンの部品があふれかえっている。中古パソコンは、中国ではまず売れなくなった。最近ではマレーシアやインドネシアなど東南アジアの奥地まで販売先を求めているという。発展した沿海部では売れず、内陸部に行くと、逆に生活するうえでパソコンは必要ない。価値がなく、売れないものをもっていくと、単なる「産廃(公害)輸出」になりかねない。
「今では、中国の内陸部からでも、インターネットを使い、最新のペンティアム4やマザーボードの価格を簡単に調べることができる。物流も整い、パソコン部品に関しては世界中、どこも同じような価格で取り引きされるようになってきた」と、広大な国土をもつ中国でさえも、以前のように都市部で安く買い、地方で高く売ることができなくなっているという。
「先日も香港から電話があり、『ペンティアム2、400MHz以上のノートパソコンが欲しい』と言ってきた。『そんなノートパソコンがあったら、ウチが欲しいよ』と言いたいほどだ」と、国内で売れないパソコンは、海外でも売りにくい状況になっている。
「通常、われわれ中古販売の業界では、30円で仕入れて100円で売るのが一般的。中古商材の仕入れは、すべて『現金仕入れ』で、在庫をもつリスクが高い。また、仕入れてから売れるようにするための整備や修理などに手間がかかることを考えれば、このくらいの上乗せをしないと割りが合わない」
「ところが、リース会社が企業から引き上げてきた中古パソコンを競り売りするとき、店頭予想売価のせめて半額で仕入れようとしても、まず不可能。利幅2割で計算して、やっと競り落とせる程度。最近では、中古業者同士の無益な競争が激化し、利幅1.5割を見込んで入札しても、競り落とせないこともある」と嘆く。
“売れる”パソコンを手に入れるためには、薄い利幅と現金仕入れ、重い在庫リスクを背負わなければならない。10年以上退蔵する家庭用パソコンを中古販売するのは、さらに難しい。「パソコンが今の家電のように『使い捨て』機器となれば、中古パソコンを扱う旨みはますます希薄化する」と、本気で3Rを考えるならば先ずはパソコンを耐久消費財に仕立てることが必須条件だと指摘する。(安藤章司)
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