The Project
<The Project ―KDDI egnavigation 開発現場の風景―>第3回 モバイル・コンテンツ企画開発室
2002/02/18 16:18
モバイル・コンテンツ企画開発室には、移動体分野の経験がないメンバーも少なくなかった。
技術の知識もありあまっているとはいえなかったが、それでも、若い組織であり、3社の合併前で、管理職が上に連なることもなかった。彼らは、「自分が携帯電話を使うなら、どんなことをするだろう」と、利用者の視線から事業を組み立てていった。
そうして2-3か月が経過していったころ、DDIから大谷宏が企画開発室に移ってきた。
大谷は、1998年に新卒でDDIに入社したのち、インターネット接続サービス「DION」の担当部署に配属になった。だが、ほぼ同時に、あるプロジェクトに加わることになった。
携帯電話を使ったインターネット接続サービス「EZウェブ」だ。
「携帯電話の部署には、インターネットの知識が少ない。逆に、インターネットの部署では、携帯電話のことがよくわからない。だから、一緒にやりましょう」と、それぞれの事業部門から人を出し合い、社内横断的に準備作業を進めることになったのだ。
EZウェブは99年4月に開始されたが、大谷はその後も、そのプロジェクトにとどまっていた。そこから、事業のノウハウを3社合併後も生かすべく、企画開発室に異動してきたのだ。
●位置情報サービス
大谷が来るのと相前後して、00年7月、位置情報サービス「EZナビゲーション」を始めた。
このサービスは、GPS(全地球測位システム)ではなく、「cdmaOne」の特徴を使って、電話機と基地局との電波のやり取りで現在位置を割り出す方式を利用している。そして、電話機の位置情報を基地局からEZウェブのサーバーに送り、サーバーから携帯電話向けに現在位置の周辺情報などを配信するしくみだ。
最初に提供されたサービスには、目的地への経路を検索する「駅すぱあと」などがあった。
「位置情報イコール地図の配信」という、正攻法の考え方だ。
だが、企画開発室の内外では、「地図だと、あまり真新しさもないし、サービスとして、ビジネスとしての広がりも見えにくい」という声が上がっていた。
同時に、こんな問題も起こっていた。
「誤差」だ。
ひどいときには、正しい場所から1キロ、2キロも離れたところにいると測定される。経路を検索しても、現在地からかなり遠い駅に誘導されることになってしまうのだ。
「誤差があっても、それを吸収できるサービスとなると、どんなものがあるだろうか」
企画開発室で、そうしたことに頭を悩ませているころ、誤差を抑える、もうひとつの計画が進んでいた。
GPSを活用して、屋内でも高精度で位置を特定するシステムの実験だ。(文中敬称略)
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