Break it! ソフト流通百景
<Break it! ソフト流通百景>32.エー・アイ・ソフト(下)
2002/02/18 16:18
ハードの利用提案
オンライン販売での実績を伸ばすエー・アイ・ソフトだが、「いくらオンライン販売が急進したといっても、やはり店頭がなくなるとは思わない。利用提案を行うことができるのは、オンラインではなく実店舗だろう」(北沢昇社長)と店舗の効用も重要だと説明する。同社では店舗で利用提案を行ったことで、「デジカメde!!同時プリント」を人気商品にした実績をもっている。
発売当初、新しいカテゴリーの商品であったことから、ソフト売り場だけでなくデジタルカメラ売り場でソフトを展示してもらう販促を実施し、商品の認知度向上につなげていったのだ。
自らもユーザー感覚で店頭に足を運ぶことが多いという北沢社長は、「ハードウェアは、店に足を運んで実際に商品を触って、試した上で購入することが多い。しかし残念ながらソフトは、触って、試して商品を購入することができない。本来、ソフトはパソコンの利用を提案するもの。ところが売り場がソフトとハードで別になってしまっている。ソフトの役割であるハードウェアの利用提案という側面が弱くなってしまっているのではないか」と、パソコンショップの売り場、ハードメーカーとソフトメーカーの関係でもっと工夫すべき部分があると指摘する。
「ハードウェアの利用提案としてのソフト」という側面が薄れてしまったという指摘は、現在のパソコンビジネスに示唆的だ。
この連載で紹介してきたように、パソコンビジネス黎明期には、パソコンメーカーとソフトメーカーの距離がきわめて近く、卸を含めて「ソフト産業を育成する」という気運があった。
現在のようにマーケットが拡大し、特定メーカーだけでなく多くのメーカーに売り場の門戸を開くというオープン性の遵守のために、あるハードウェアの利用提案に向けてソフトメーカーと連携するというケースが少なくなってしまった。
「ハードウェアの利用提案のひとつが、ソフトをハードにバンドルすることなのだろうが、それだけが本当に利用提案なのか」と北沢社長は苦笑いする。
そして、「バンドルだけがハードの利用提案ではない。この点をアピールするために、ソフトメーカーがもっとハード売り場を活用することを真剣に考えた方がいい。ハードメーカーとの連携で、もっとできることがないのか提案していかなければ」と続ける。
現に同社の関連会社であるセイコーエプソンでは、「パソコンなしで、プリンタだけで完結するソリューションをさらに追求していく」ことを掲げている。
これに対しソフトを開発するエー・アイ・ソフトでは、「プリンタとデジカメで完結というのはひとつの提案だとは思う。しかし、パソコンが完全に不要ということにはならない。パソコンやソフトがなければ十分ではないという世界をどんどん作っていかなければ」という立場である。
今後、ブロードバンドの普及で、「新しいデバイスが登場してくることになるだろう。そうした新しいハードの利用提案ができるソフトメーカーでなければならない」と、今後の商品づくりにもハードの利用提案としてのソフトという視点をひとつの核としていく。
「今年の4月以降は、新しい商品をどんどん市場に投入していく」(北沢社長)。
ソフトビジネスの本番はこれからだと意欲的なのである。(三浦優子)
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