どうなる? PCリサイクル

<どうなる? PCリサイクル>15.回収率を高めるには

2002/02/18 16:18

 家庭が排出するパソコンは、ほとんど価値がない――。こう話すのは、中古パソコン販売を手がけるパシフィックネットの上田満弘社長だ。パソコンリサイクルの基本精神となっている3R(排出抑制、中古利用、素材のリサイクル)の1つ、「中古利用」を家庭用パソコンに適用するのは難しいというのが、中古パソコン関係者の一致した見方である。

魅力にとぼしい家庭パソコン

 2001年4月から始まった企業用パソコンのリサイクルが比較的順調に進んでいる要因として、(1)2-4年の比較的新しく、同一規格で均質的なパソコンが、まとまった数で出てくる、(2)ほとんどがリース品で、回収の際はリース会社が新しいパソコンと引き替えに、古いパソコンを引き取る――など、中古利用しやすい環境が整っている点がある。

 この点、家庭で使うパソコンの排出までの期間は13年以上と長く、回収する仕組みもない。ほとんどが1台、2台の単位で、規格もバラバラで均質性に欠ける。このため、中古パソコン事業者にとっての“ビジネス的な魅力”は少ないと指摘する声もある。

 上田社長は、「企業からの比較的良好な中古品でも、使用期間5年でデスクトップ1万円以下、ノート3万円以下に価格が下がっている。以前は、もう少し相場が良かったが、排出パソコンが増えるに従い、価格が下がる傾向が続いている。ビジネス的にみれば、より均質な中古パソコンを、極力手間をかけずに、大量に売りさばかなければ利益が出ない」と話す。

 「手間をかけない」といっても、パソコン本体の清掃、整備、不良箇所の修繕などに加えて、ハードディスクに残っているデータの消去作業は避けて通れない。

 上田社長は、「銀行や官公庁からの排出パソコンも多く扱っており、データ消去作業は最重要項目の1つ。当社では、『PCホワイト』という特殊な消去用ソフトを使い、ディスクから完全にデータを消去している」と胸を張る。

 だが、この一連の作業だけでも、1台当たり30-40分かかり、アルバイトの時給分は確実にコストとして計上しなければならない。

 また、回収率を高めるためには、「軒下回収は必須」だと指摘する。「現在、東京と大阪を中心にトラック30台をフル稼働させ、毎月4000か所の企業を訪問し、中古パソコンを回収している。仮に、回収拠点がない札幌の企業の排出パソコンを買い取る場合、やむを得ず、『宅配便で送って欲しい』と依頼を出す。ところが、企業はなかなか送ってくれない。実際に訪問しないと、回収率を高めることはできない」と話す。

 「家庭で使用期間が5年未満のパソコンを回収しようとする。ところが、前述の通り、5年も経ったパソコンは文字通り二束三文にしかならない。一般の消費者にとって、5年前に20-30万円で買った“重み”は、実感として残っている。パソコン自体も小型化していることから、価値のあるうちに、おいそれとパソコンを手放す気持ちにはなれないのではないか」

 こうなると、自然に退蔵パソコンが増え、結果的に排出までに13年以上もかかることになる。

 パシフィックネットでは、毎月2万台の排出パソコンを回収し、6000台を中古パソコンとして販売している。この4月からは、新しく名古屋に回収拠点を開設し、回収能力を毎月3万台に高める。今年度(02年6月期)の売り上げも前年度比25%増の20億円に増える見通しだ。

 「状態が悪く中古化できないパソコンは、CPU、ボード類、CD-ROMドライブなど部品化して、1点あたり数百円で販売。IBMのThinkPadのマウス操作用の突起ゴムも、袋に入れて200円で売る。とにかく、コスト削減と細かい作業の積み重ねでやっと利益が出るビジネス」だと上田社長は話す。

 家庭用パソコンのリサイクルが始まることで、何らかの形で中古市場にプラスに働けば良いのだが、今のところその材料は見あたらないようだ。(安藤章司)
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