IPO後の財務施策

<IPO後の財務施策>15.インターネットセキュリティシステムズ

2002/02/18 16:18

 昨年から、企業のシステムやネットワーク上のセキュリティに対する関心が急速に高まっている。

 柱となるテーマを探し続けていた株式市場では、「ネットバブル」の崩壊後、創薬につながるゲノムや、半導体、医学などで活用が期待されるナノテクノロジーなどの将来性を買う動きが活発化した。

 そんななか、急成長市場として一躍注目され始めたのがセキュリティ関連のマーケット。米国で起きた同時多発テロにより、サイバーテロに対する警戒感が一気に高まったほか、自己増殖型(ワーム)のコンピュータウイルスの加速度的な増加、違法アクセスによるハッキング行為もあとを絶たない。

 そんな状況のなかで、一躍知名度を上げた企業がインターネットセキュリティシステムズ(ISS)だ。

 米国の同時多発テロ直前の9月4日、JASDAQ市場に上場するが、公募価格の20万円は初値で5万5000円まで下落するという相場環境の悪さに足を引っ張られる。

 しかし、予期せぬ外部環境の急変によって、その後の株価は年末までに100万円近くまで急騰。ネットワークセキュリティ市場の将来性をいち早く投資家が読み取った。

 同社は米国ナスダックに上場するISS inc.の日本法人として97年2月に設立。ネットワークへの違法なアクセスを見張る不正侵入検知ツール(IDS)とセキュリティの弱点を検査する脆弱性検査ツールの売上構成が全体の75%を占め、これまでは主にプロダクト(製品)販売で業績を拡大。政府・官公庁や大企業を中心に高まりを見せる需要を取り込んできた。

 ISS inc.はすでに米国で高いシェアを確立しているものの、「日本では今後が期待される成長分野」(渋谷敏孝・取締役総務人事部長兼社長室長)として意気込む。

 一方、プロダクト中心に進めてきたビジネスモデルも大きく転換し始めている。

 昨年7月から進めているリモートセキュリティ監視センターを活用した24時間体制の監視サービス(MSS:マネージドセキュリティサービス)は、今期(1-12月)から本格化。「中期的にはMSSを全売上の40%まで拡大させ、プロダクト40%、その他のサービス20%にもっていきたい」(渋谷取締役)という。

 MSSの導入企業が広がることによって、安定したコアの収益基盤が確立され、シェアを押さえるうえでも寄与度が大きくなる。世界6拠点のセンターを活用することで、セキュリティのバックアップ体制が整っていることが強みだ。米国、日本(アジア、オーストラリア地域を含む)、欧州の3拠点で世界シェアを押さえる日は近づきつつある。

 先駆した株価急騰の実力が、これから試される。(マーケットウォーク 鮎川 良)
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