Skill upへの挑戦 これからのIT人材育成
<これからのIT人材育成>第107回 情報処理振興事業協会(IPA)
2002/02/18 16:18
IT水準を全国レベルで底上げ
中堅・中小の経営者を支援
■教材の開発・提供などを行う IPAでは、1998年に施行された新規事業創出促進法に基づき、高度な情報処理に関する知識と技能を有する人材の育成を行う新事業支援機関の支援活動を行っている。この新規事業創出促進法における情報関連人材育成事業の基本的な構図は以下の通り。
経済産業省および厚生労働省が策定した基本方針に則り、都道府県や政令指定都市が基本構想を作成し、新事業支援機関を定める。企業などは、必要な人材を認定された新事業支援機関に派遣し、研修を行う。IPAは直接、新事業支援機関に様々な支援を行う。
一方で、雇用・能力開発機構は、情報関連人材育成事業助成金として、IPAには推進団体助成金を、新事業支援機関には情報関連人材育成事業推進助成金(助成対象経費の1/3)を、企業などへは情報関連人材育成事業派遣奨励金(大企業:受講料の1/4、中小企業:受講料の1/3)を支給する、という仕組みとなっている。
この際、IPAではどのような支援を行うのか。大きく(1)教材の開発・提供、(2)指導・助言――の2つに分かれる。
(1)では、新事業支援機関が実施する情報技術研修について、プログラム言語からシステム開発、プロジェクト管理、情報システムの企画・運営までの最新技術・知識を盛り込んだ教材を開発・提供する。(2)では、新事業支援機関が行う研修が実際に新事業の創出につながっているかどうかの運営方法に対する指導・助言が中心となる。
■全国28か所で人材育成支援
現在、全国の都道府県にある新事業支援機関の数は28か所。このうち20か所は、89年に施行された地域ソフト法に基づき、国の出資によって設置されたソフトウェアセンターが占める。その目的は、地域における高度な人材育成である。
その後、地域ソフト法が新規事業創出促進法に衣替えし、新たに8つの機関が参加して現在の28か所となった。認定された新事業支援機関は、基本的には国からの出資による設立だが、一部、民間資本も参加している。いわゆる第3セクターである。
新事業支援機関で行う教育は、IT技術の上流から下流まで、すべてを網羅する幅広いもので、実践的な技能や技術の習得を目指すプログラムとなっている。民間の教育関連企業のような、資格取得のための予備校とは位置づけが異なる。最近の人気講座は、XMLやJava関連だという。
「ニーズに比べ受け皿となる機関の数が少なすぎる。実感として不足しているのは事実」と、IPA人材育成推進部企画課の水上雅弘課長は言う。
■経営戦略責任者の支援も
個人のスキル向上を目指す情報関連人材育成事業のほかに、IPAでは中堅・中小企業において戦略的情報化を実現する責任者「経営戦略責任者(CSO)」を支援し、企業の競争力を活性化させるための事業も行っている。
ITSSP(ITソリューション・スクエア・プロジェクト)と呼ばれるこの事業は、中堅・中小企業から任意の参加者を募り(ウェブによる登録者数は02年1月現在で1万人強)、前記の新事業支援機関の講師やITコーディネータ資格取得者、情報サービス・ITコンサルティング企業といった専門家とのマッチングを展開している。
登録者は、IT活用の課題解決や先進事例について検討を行う「経営者交流会」や戦略的情報化投資に関するセミナーに参加し、情報交換を行うほか、具体的な取り組みについて、ITコーディネータなどから実際に自社を訪問してもらい、指導・助言を仰ぐこともできる。また、ウェブでは投資事例や製品情報、経営責任者同士の情報交換も行われている。
「地方企業の経営者にとっては、『ITを活用して一体何ができるのか』など、そもそもの出発点がよく分からないという方々が意外に多い。このような試みを通じ、方向づけを行うことがきっかけとなるのではないか」と水上課長は言う。
■IT企業とのミスマッチを解消
結局、経営者あるいは企業にとって、アドバイザー的な役割を果たすことができる人材が必要不可欠。しかし現実にはそのような人材は明らかに不足している。ITSSPを通じて寄せられる具体的な相談内容には、例えば、建具屋や家具店、建築会社などが集まってマーケットプレイスを構築したいのだが、実際にどうすればいいのか、という案件がある。このような問題に対して解決策を助言できる人材が社内にいれば良いが、通常はコンサルティング専門企業やIT関連企業への丸投げとなる。だが、その際、適切な発注が行えるケースはかなりまれだ。
コンサルティング企業やIT関連企業にしても、最近では「アドバイスとはいえ無料という訳にはいかない。それを理解しない企業は多い」のが現実。ITSSPでは、このようなユーザー企業とIT関連企業のミスマッチ解消も目指す。
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