WORLD TREND WATCH
<WORLD TREND WATCH>第93回 MSのOS戦略
2002/02/18 16:04
「Linux粉砕プロジェクト」
同時に、エンタープライズ担当チャールス・スティーブンソン副社長をヘッドとするLinuxエキスパートセールス、パートナーを集めたLinux粉砕とIBMのLinux戦略成功を阻止する目的の専任部隊を編成した。社内文書では、マイクロソフトが「Linuxとこれをサポートするベンダーを徹底的に攻撃する力を強化することが必要」と述べられている。「マイクロソフトは社員に、同社幹部が日夜熱心にLinux普及阻止を討議していることを承知してくれることを願っている」と同文書は述べている。
マイクロソフトは同社ユーザーにどのようにLinuxが浸透したかの経緯について十分知ることが、Linuxを阻止するために必要だと社員に訴える。そのため専任部隊にはウィンドウズユーザーのLinux採用経緯を詳細に調べることをマイクロソフトは求めている。
その文書の結論として、「もしほかのOSを扱わずにウィンドウズのみでビジネスを進めれば、そのSIer売上高が伸びることを納得させることが重要だ」と述べている。
このマイクロソフトの対Linux攻撃が公になって、Linuxを扱うSIerの発言は二手に分かれている。1つは当面Linuxビジネスには影響ないという意見だ。もう1つは、Linuxを扱うSIerはウィンドウズビジネスが不利になるような差別化戦略をマイクロソフトが採ってくるのではないかとの不安に集約されている。
現在米国のSIerの60%はウィンドウズとともにLinuxを販売している。Linux取り扱いSIerに対してマイクロソフトが何らかの差別をしてくれば、その影響は大きい。
米国の中小SIerは大部分がウィンドウズ専門であった。しかしネット関連ビジネスが拡大すると、サンの小型UNIXサーバーが多くの中小企業にも導入された。「eビジネスはUNIX」という認識が米国中小経営者に定着したからだ。
従ってサンのUNIX対抗としてLinux販売に踏み切ったSIerは多い。UNIX、Linux中心のSIerはマイクロソフトがLinux対抗を明確に打ち出せば、Linux評価はユーザーで高まるので、マイクロソフト戦略は逆効果だと主張する。
一方ウィンドウズ中心のSIerは、もしマイクロソフトがLinux併売SIerに対して、価格的、納期的差別をしたり、またそれらSIerに対してウィンドウズサポートに力を入れないことになることを恐れている。
ユーザーがマイクロソフトのLinux併売SIerに対する差別を知れば、ウィンドウズユーザーはそれらSIerの活用を避けるようになることを最も恐れる。しかし、マイクロソフトがLinux阻止に力を入れるだけLinux普及が進んでいるのが、米国OS市場の実態なのだ。
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