進化するECビジネス

<進化するECビジネス>ラクーン 売り手と買い手を結び在庫を売れ筋商品に 正規品のECサイト

2002/02/11 16:18

週刊BCN 2002年02月11日vol.928掲載

 ラクーン(小方功代表取締役)は、インターネットを活用し、売り手と買い手を結ぶECサイト「オンライン激安問屋」を運営しており、2002年1月下旬の時点で、約550社の売り手会員、約1万3500店舗の買い手会員を獲得した。このサイトでは、売り手がメーカーや商社など、買い手が小売店を対象とする。買い手会員としては、インターネットビジネスに意欲があり、設立間もない小売店が大半を占める。今年に入ってからは、これまで培ってきた小売店ネットワークを生かし、正規品販売サイト「スーパーデリバリー」を2月4日に新設した。

過剰在庫の問題を解決、小売店の仕入れも改善

 ラクーンが提供する「オンライン激安問屋」は、インターネット上で、メーカーや商社などの過剰在庫を小売店に安値で卸すことが特徴だ。

 小方代表取締役は、「売り手と買い手を結びつけることで、売り手の在庫処理を解決し、小売店の仕入れ問題も改善することができる。そのためにサイトを立ち上げた」とサービス開始のきっかけを話す。

 売り手は、在庫となった商品をできるだけ早い時期に、高い価格で販売したい。しかし、既存の流通経路で過剰在庫となってしまったために、その流通を活用して処分することが難しい状況である。

 一方、小売店は、よい商品を安く仕入れるため、流通経路を拡大させることに注力している。こうした売り手と小売店の問題点を結びつけることで、双方のメリットに変えることに成功したのである。

 会員数は、1月下旬の時点で売り手会員が約550社、買い手会員が約1万3500店舗に達している。会員となっている小売店は、首都圏に限らず全国各地に点在している。

 売り手側のメリットとしては、営業コストをかけずに地方の小売店を開拓することができること。また、サイトでは、大企業のブランドイメージを損ねないために、売り手側の掲載が商品情報のみで企業名が公表されないことも特徴だ。匿名性を徹底するために、商品の検品を同社が自社内で行っている。

 買い手側のメリットとしては、品質のよい商品を小ロットで安く取り引きできることだ。とくに、地方や小規模の小売店の場合は、インターネットを介することで、仕入れにかかる時間とコストが削減できるのが最大のメリットである。

 取引形態には、小売店が注文することで同社が売り手に発注をかける「受発注型仕入」と、同社があらかじめ自社倉庫に預かる「消化型仕入」の2方式をとっている。

 サイト使用料は、会員になるための登録料やサイトへの商品情報の掲載料が無料。

 手数料は完全成功報酬型で、取り引きが成立した場合に、売り手が販売額の20-50%を支払う。

小売店ネットワークを、流通の活性化に生かす

 「オンライン激安問屋」では、「小売による未引き取り品」や「シリーズ変更による型落ち品」、「季節終了による過剰在庫」が取り扱い商品。売り手側の匿名性を確保するために、中古品や倒産品などは扱っていない。

 商品アイテムは、アパレル、雑貨、家電で、取扱商品はアパレルが40%、雑貨が45%、家電が15%で構成されている。

 小売店は、「オンライン激安問屋」で仕入れた商品を「ワゴンセール」や「チラシの目玉」などにしている。だが、「サイト上で在庫処理の商品だけでなく、正規品もサイトで取り引きしたいというニーズが高まっている」と強調しており、「中小卸が不況によって倒産が相次ぐことで、小売店では、中小卸に頼って十分に商品を仕入れられないケースが増えている」と分析する。小売店では、「オンライン激安問屋」で仕入れた商品が平均で売上高全体の7%まで上がっているという。

 また、「売り手からは、代金回収管理と営業コストの問題がなくなれば、地方、小規模に関わらず取り引きしたいと考えている」状況だ。

 そのため、「売り手と小売店を結ぶネット取引所のニーズが大きい」と判断し、今まで培った約1万3500店舗の小売店ネットワークを生かし、正規品の取り引きを行うサイト「スーパーデリバリー」を今年2月4日から開始した。

 開始当初は、出展を契約した企業が11社、出展を表明した企業が19社、計30社が賛同している。

 「スーパーデリバリー」では、売り手が社名を公開して販売する。小売店が2次・3次卸を経由せずに、大手メーカーや大手商社から継続的な仕入れの仕組みを作ることが狙いだ。

 売り手は、小売店から注文が来ると直接商品を配送する。買い手からの回収は、信販会社の信用決済サービスを活用している。

 売り手のサイト利用料は、初期費用が25万円、掲載料が1点につき3000円、手数料として取引額の10%を支払う。小売店の利用料は、月額2000円となっている。

 「スーパーデリバリー」では、流通構造を変革するだけでなく、消費者によい商品を提供することも狙いとしている。「『オンライン激安問屋』の会員となっているメーカーに『小売店からの要望やクレームを2次・3次卸がクッションのように吸収すべきか』を聞いたところ、ほとんどが『ダイレクトに受け止めたい』と話していた」としており、メーカー自らが小売店を選定したいというニーズが高まっているという。

 こうした状況から、「ECビジネスは、昨年まで実業界と少しかけ離れた世界だったが、今年は実業界のツールとして本格的に飛躍する」と分析している。

 01年4月期の売上高は、約5億円。02年4月期には、約7億円を目指す。

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外部リンク

http://www.raccoon.ne.jp/