Skill upへの挑戦 これからのIT人材育成
<これからのIT人材育成>第5回 TKCの人材育成策
2002/02/04 16:18
週刊BCN 2002年02月04日vol.927掲載
簿記2級取得が必須 資格手当も充実
■3つのコンセプトTKCが新卒採用時に学生を選択する基準は、TKCの頭文字で表されるコンセプトである。
それは、T=Toughness、K=Knowledge、C=Competencyの3点。Toughnessは打たれ強さなどの精神面を、Knowledgeは専門的な知識、Competencyは潜在能力(問題解決力、創造力、統率力など)を意味する。
このコンセプトに合致する人材を同社では求めている。面接の場で、このコンセプトに合致する人材は「全体の20%」(総務本部人事部・伊藤健一課長)に満たないという。
Knowledgeに関して、同社では社員がもつべき最低ラインの資格として日商簿記2級取得を課している。少なくともチーフ昇格時までには必ず取得しなければならない出世のライセンスである。
四年制大学卒の内定者のうち、約30%程度はすでにその資格を持っており、内定後入社時までには全体の70%弱が取得するという。入社前にこの資格を取ると、10万円の一時金が出ることもあり、入社前の取得を目指す内定者が増えている。
「基本的に内定者に対して入社前に教育を行うことはない。こちらでハードルを課し、自助努力に期待する」という。
同社の場合、会計事務所向け情報システム開発・運用が主要ビジネスの1つであることから、簿記2級は必須資格ということになる。
一方、SE・プログラマーとしての基本資格である基本情報技術者試験の取得については、「システム開発要員には必要だと思うが、簿記2級のようなハードルは設けていない」。
簿記2級は、会計事務所、地方公共団体といった市場をターゲットにしているそれぞれの部署、あるいは職種に関係なく、すべての社員が取得しなければならない。
■「ITスペシャリスト」制度
システム部隊に限定するとKnowledge(専門的な知識)はどうなのか。組織は大きくシステムコンサルティング(営業系)と開発系に分けられる。
このうち、開発系は、社内資格である「ITスペシャリスト」(部長、次長、課長、チーフ、サブチーフなどの役職に相当)制度が設けられ、特級から上級、中級、初級まで大きく4段階に分けられる。さらに、特級から中級までは1号から3号、初級のみ1号、2号との区分けがある。
ITスペシャリストに認定されれば、年間40万円の社外教育予算が支給される。この特別支給金を利用して海外研修を受ける社員もいる。
現在、同社では約40人のITスペシャリストがいる。ITスペシャリストになるには、原則として最低3年の勤続年数が必要だ。
また、税務情報システム、財務情報システムなどの主要なシステムを研修科目とし、延べ4日間の集合研修と試験、顧客への導入実績により「資格」が認定される社内資格制度によって、資格手当が賦与される。
なお、社内資格制度は、課長職以上(課長、次長、部長)の役職は適用外である。
課長職以上の役職に求められる「審査基準」については、昨年から社内で議論が開始された。これは、「課長職以上役職者の職務グレード基準」として策定され、システム・コンサルティング・グループ(SCG)部門、地方公共団体部門、サプライ部門、システム開発部門、情報処理サービス課・電算室部門、総務部といった各部門で評価基準を明確に定めている。課長職以上が成果主義に基づく年俸制になっており、実績に応じて待遇に変化が生じる。
■自主的な努力を尊重
このほか、ユニークな人材育成策として、「読書命令制度」や「個人図書購入支援制度」、「専門研究課題図書登録制度」という書籍に関する制度を設けている。
「読書命令制度」とは、上司が部下に対し、有効と思われる書籍の読書を命じレポート提出を課すもの。これは創業者である飯塚毅会長が本を読んで勉強してきた経験から生まれた制度で、例えば入社時には大森曹玄の「参禅入門」(春秋社)の読書が課せられる。
「個人図書購入支援制度」は、一般社員年間10万円、管理職以上20-30万円の書籍購入資金が援助される制度。
図書購入の援助を受けるためには、購入時の翌月末までにレポート提出が義務づけられるが、自主的に勉強を行う意志のある社員にとってはきわめて有用な制度であるといえるだろう。
昨年10月に創設した「専門研究課題図書登録制度」は、社員が任意に専門図書を登録することで、社内での特定分野(書籍)における専門家を目指す制度。これらの制度は、社員の自主性に委ねられている。
同社の人材育成の基本は、自主的な努力を補助する仕組みとして制度化されている側面が大きい。
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