IT革命第二幕 ~e-Japanのゆくえ~

<IT革命第二幕 ~e-Japanのゆくえ~>第2章 21.統合型GIS

2002/01/28 16:18

週刊BCN 2002年01月28日vol.926掲載

 道路や水道など社会インフラ整備から、防災計画の策定まであらゆる行政サービスの基盤となる地図情報――。行政機関の各担当部署が個別に管理してきた地図情報を統合化して効率的に使用する「統合型GIS(地理情報システム)」がいよいよ本格化する見通しとなってきた。

 旗振り役を務める総務省では、統合型GISの普及に向けて基盤整備を進めてきた。昨年7月には、地方公共団体がシステム導入する場合の「統合型の地理情報システムに関する指針(整備指針)」を策定した。

 今年度いっぱいで、これまで行ってきた実証実験の仕上げとなる01年度実験が終了。この成果を受けて、02年度中には運用指針と活用指針(仮称)を策定して、統合型GIS導入に向けた基盤整備がほぼ完了する。

「なぜ“統合型”なのか。道路を作るにしても、福祉サービスを提供するのも、ほとんど地図が必要になる。その共通基盤となる地図の上に、水道や、防災時の避難経路など必要な情報を重ね合わせていけば、行政事務が大幅に効率化できる。だから“統合型”が必要となる」(総務省自治行政局地域情報政策室・宮原則幸課長補佐)。

 すでに地方公共団体では、事務合理化のためGISの導入を前向きに進めてきた。都道府県では8割以上、市町村でも2割以上が導入済みだ。

 しかし、GISを必要とする部署が個別に導入しているケースがほとんど。“統合型”を導入しているところは、わずか全体の3%(01年4月)にとどまっている。統合型GISの普及は、まさにこれからなのだ。

 総務省では、統合型GISへの取り組みを97年度から本格化してきた。98年度にはプロトタイプを開発し、最初の実証実験をスタート。実験成果を踏まえて地図データを共用するための仕様などの策定を進めてきた。

 昨年7月に策定された整備指針によって統合型GISの要件や仕様などが定められ、システム導入の環境はほぼ整った。整備指針の内容は、総務省の委託で開発を進めてきた地方自治情報センターのホームページ(www.lasdec.nippon‐net.ne.jp/)で公開されている。

 さらに、01年度の実証実験は、地図情報を効率的に更新するなどの運用方法や、都道府県と市町村の役割分担などを検証することを主眼に行われている。実験地区は千葉県&市川市・浦安市、高知県&高知市など4地区。この成果を基に運用指針、活用指針を策定する計画だ。

 総務省では、すでに99年度から統合型GISの普及に向けた財政支援措置をスタートしている。特別地方交付税によって、統合型GISの導入に必要な共用空間データ整備費(ソフトウェア部分の開発費用で、都道府県・政令指定都市は上限2億4000万円、市町村は1億2000万円)の2分の1に財政力に応じた補正をかけた額を補助する。「01年度予算では都道府県で10団体強、市町村で100団体弱を支援する措置を講じた」(宮原課長補佐)。

 02年度も「徐々に地方自治体でも導入意欲が高まっており、前年度実績を上回ることになるだろう」と意欲的だ。

 統合型GISの導入効果は、まだ一部で運用が始まったばかりで、実績はこれからだ。「例えば10枚の地図を別々に作成し、維持管理していたのが、統合すれば1枚で済む。管理費が大幅に削減できるはず」(宮原課長補佐)。
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