The Project

<The Project ―キヤノン IXYデジタル 開発現場の風景―>第7回 第2世代機の開発

2002/01/21 20:43

週刊BCN 2002年01月21日vol.925掲載

原色フィルターを採用

IXY DIGITALは、1年間で100万台出荷という偉業を達成した。まさにキヤノンのデジカメ部門にとって“中興の祖”となったのである。

キヤノンは技術先行型の企業とのイメージが強い。それは確かにその通りなのだが、未開の市場を同社が率先して開拓してきたケースは案外少ない。同社が本領を発揮するのは、2番手メーカーとして追い上げ体制に入ったときである。

この点では、過去数多くの実績を上げているといって良く、それが今日のキヤノンを支えている。

デジカメにおいて、追い上げのターニングポイントになったのがIXY DIGITALだが、単一モデルの寿命はそう長くはない。

パソコンのように四半期に1回というほど厳しくはないにせよ、競合メーカーが増えるにつれて短縮化の方向をたどり始めていた。

IXY DIGITALが爆発的な売れ行きを見せるのに自信を深めながら、キヤノンの開発陣は、1年後の発売をめどにすでに次期モデルの開発に取り組んでいた。

一番大きな変更点は、CCDのカラーフィルターに「補色フィルターに代えて原色フィルターを採用した」(中里三武郎副部長)点だった。

「補色フィルターにもそれなりの良さはあるのだが、より銀塩カメラに近づけるためには原色フィルターの方が良いと判断した。一般に、原色タイプは色の再現性には優れているが、輝度のS/Nや解像度の面で不利になることが多い。それを解決するために、信号処理回路を新たに開発したが、偽色の削減や解像度の向上に顕著な効果を見せた」(同)。

また、「赤外カットフィルターの特性も大幅に見直し、赤外領域だけを一気にカットしてしまうようにした。これらフィルター部分に改良を加えることで、補色タイプとほぼ同等の輝度S/Nが得られるようになり、ノイズの少ない美しい色再現を可能にした」(同)という。

モデルとしては、2モデル開発することにし、上位モデルには3倍ズーム機も大きな変更点だ。
  • 1