進化するECビジネス
<進化するECビジネス>イー旅ネット・ドットコム 旅行業界初の本格的なBtoBサイト
2002/01/21 16:18
週刊BCN 2002年01月21日vol.925掲載
旅行業界の課題、電子商取引で解決
旅行業界では、旅行に関する消費者ニーズが多様化したことで、旅行商品の低価格化による流通構造の変化や旅行業者の中抜き化などといった多くの問題が生じていると指摘されている。加えて、米国の同時多発テロにより、海外旅行者が激減しており、大手、中小に限らず旅行関連企業は少なからず痛手を負っている。旅行産業は約18兆円の市場規模。そのうち10兆円近くが旅行業者を通じた宿泊、ツアーなど。関連企業数は約1万1000社あるといわれており、うち上位20社で取引全体の8割を占めている。大多数の企業が残り2割の市場でシェア争いを繰り広げていることになる。
「最近では、旅行業界でどう生き残るかについての意見が盛んに交わされている。そうしたなか、旅行業者と商品・サービス提供企業がガッチリと手を組むBtoB向けeマーケットプレイスにより、旅行者に対する利便性を提供するとともに、適切な利益を旅行業界にもたらすことが重要だ」。こう話すのは、イー旅ネット・ドットコムの石井諭社長。
同社では、01年4月に旅行業界に特化したBtoB向けeマーケットプレイス「e-旅ネット・ドットコム」のサービスを開始した。
消費者が宿泊やツアーを予約するサイト、いわゆるBtoCサイトは数多くあるが、旅行業界向けの本格的なBtoBサイトは「e-旅ネット・ドットコム」が日本の旅行業界では初めてとなる。
サイトでは、バイヤーとして主に旅行代理店を中心とした旅行業者、サプライヤーとしてホテルや観光施設、レストランなど旅行関連の商品・サービスを提供している企業を対象としている。
特徴は、バイヤーが今まで手配や仕入れが不可能だった地域・素材をもつサプライヤー企業との間で商談を進めることができる点。サプライヤーの情報検索で瞬時にデータが閲覧できる。サイト経由で見積りを依頼し、参加する複数サプライヤーからの入札を受けることも可能だ。
サプライヤー側としては、複数バイヤーからどのような見積りが来ているか検索し、入札することで新しい販路の開拓ができる。バイヤーからの最新ニーズを知ることも可能。突然のキャンセルや売れ残りなどは、「間際バーゲン」コーナーを利用することで販売チャンスを逃さない。加えて、無料の電子カタログを利用することで、最新の商品・サービス情報を少ないコストで的確にバイヤーに発信することができる。
価格は、サプライヤーが月額8000円から、バイヤーは無料でサービスを受けることができる。
消費者ニーズに迅速対応、法人向けサービスも開始
従来、旅行業界の取引の流れは、電話や直接訪問による仕入れ、手配が一般的だった。「多様化する消費者ニーズに対応するためには、インターネットを活用した迅速な情報収集、取引が必要。この点が徐々に認知されてきた」(石井諭社長)という。
サービス開始以来、1832社の会員数を獲得している。現在では、バイヤーとサプライヤーが取引を確立するための新しい販売チャネルとして、従来の「1対1」や「1対多数」だった個別・ダイレクト取引から、「多数対多数」の複数取引が可能になり、希望商品を迅速に、しかも安く購入できるBtoBサイトとして注目されている。
「会員企業からは、パッケージツアーでは対応できない特殊な手配に力を発揮するサイトとして活用できるとの評価を得ている」(同)と自信をみせる。
国内の団体旅行を中心に扱う旅行業者は、海外旅行の依頼に対してパッケージツアーを勧めるケースが多かった。「e-旅ネット・ドットコム」を活用することで、取引がなかったサプライヤーを検索することができ、少人数の特殊な海外手配が可能になったという。
あるサプライヤー企業からは、旅行業者との密な情報交換により、特殊な旅行に関しても迅速な対応が可能と好評だ。同社では、さらに会員数を増やしていくために、新サービスも開始している。
今年に入ってからは、イーギャランティとの提携により、「e-旅ネット・ドットコム」に決済機能を追加した。これにより会員企業は、代金の請求、支払い、未収管理といった業務コストの低減を図ることができる。
今月20日からは、一般企業(バイヤー)と旅行業界(サプライヤー)をつなげるeマーケットプレイスを新しく立ち上げた。旅行関連企業としては、一般企業の新規開拓につなげられるメリットがある。
一般企業としては、幅広い旅行関連企業データを検索し、既存の仕入れ先と比較することで旅行に関する調達コストの削減に役立てることが可能。バイヤーは、外資系を中心に59社の一般企業が参加しているという。
同社では、「今後も旅行業界における企業間取引の構造変革をリードする形で成長を続けていく」構え。03年度までに約5000社の会員数を見込んでいる。
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