IPO後の財務施策

<IPO後の財務施策>11.タリーズコーヒージャパン

2002/01/21 16:18

週刊BCN 2002年01月21日vol.925掲載

 スペシャルティコーヒーを日本へ…。いち早く米国のコーヒー文化を日本に紹介することを目指してビジネスを立ち上げたのがタリーズコーヒージャパンの松田公太社長。日本で一番乗りとなるはずだったが、僅差でスターバックスに先を譲った。

 タリーズといえば大リーガーのイチロー選手が所属するシアトルマリナーズの球場でもそのロゴを見る機会が増え、日本におけるブランドイメージの向上にも一役買っている。

 米国におけるタリーズの位置づけは、店舗数でスターバックス、カリブコーヒーに次ぐ3番目となるが、最高の豆にこだわり続け、最も品質が良いとされるアラビカ種のなかでも、世界のコーヒーマーケットで取引されるトップ1%の豆を使用。コーヒーを愛好する人たちから高い支持を得ている。

 日本では1997年8月に第一号店を東京・銀座にオープンしてから現在までに首都圏を中心に40店舗まで拡大。ビジネス街を中心に出店し、ビジネスマンやビジネスウーマンをターゲットにする。

 「繰り返しコーヒーを飲む人ほど味の違いには敏感になる」(南場綾子・広報課マネージャー)ことから、品質のわかる愛好家を取り込んでいる。

 同社はベンチャー企業のIPO(新規株式公開)による成長シナリオに適った1社でもある。01年7月にナスダック・ジャパン市場で調達した資金で店舗網を大幅に拡大する計画のほか、IPOから2か月後にベンチャーリンクとの提携によって本格的なFC(フランチャイズ)展開を発表。今年度末までに100契約を見込む。

 海外企業とのライセンス契約ではロイヤリティの支払いが発生するケースが多いなか、日本におけるシェアの確立が、米国でも成長過程にあるタリーズのメリットとなるため、同社にはそれがない。FC展開に向け、「クオリティ」へのこだわりから、コーヒー豆の国内焙煎の権利を取得し、「鮮度、品質の強み」をさらに向上させている。

 ゆったりと落ち着いた雰囲気を醸すため、店舗の内装つくりにも特徴がある。とくに椅子。くつろげるソファー席や、趣向を凝らした木の椅子など、店舗によって変化も楽しめる。タリーズコーヒーが伝えるコーヒー文化は首都圏のビジネス街で急速に浸透し始めている。

 「マニュアルを重視する日本は、FC展開がマッチしやすい市場」(新井賢二・経営企画室室長)であり、国内でのFC店拡大によるロイヤリティ収入が寄与し、売上、利益の両面で今後の成長余地は計り知れない。

 この2年間、ベンチャー市場で多数の企業がIPOをしたが、株式市場においても今後の期待が大きい1社と言えそうだ。(マーケットウォーク 鮎川 良)
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