進化するECビジネス

<進化するECビジネス>アパレルウェブ 情報検索を武器にアパレル企業を支援 アジア市場も視野に

2002/01/14 16:18

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

 アパレルウェブ(千金楽健司代表取締役)は、アパレル業界に特化したサイト「アパレルウェブ」を2000年5月に開設、サービス開始から約1年半でアクセス数は月間約280万ページビューに達するまでに成長した。サイトではアパレルに関する情報の検索や、製品売買におけるマッチングサービスなどを提供。企業向けにホームページの作成やITコンサルティングなども手がけている。現在、アジア各国からの海外アクセスが全体の20%を占めるようになっており、今後はアジア市場を視野に入れた企業間のマッチングビジネスを確立し、アパレル業界の活性化を目指す。

00年5月からサービス開始、月約280万アクセスまで成長

 アパレル業界は、関連製品を含め市場規模は21兆円といわれており、自動車業界や家電業界の9兆円と比較しても、きわめて巨大な市場だ。関連企業数は50万社、就業人口が500万人に上るとされており、その大半を中小企業が占めているのが特徴である。

 一方、市場規模とは裏腹に、購買行動の変化による消費の低迷、海外や新規企業の参入による競争の激化など、業界を取り巻く環境は厳しい状況にある。その結果、消費者の嗜好に即応しながら、魅力ある商品を適時・適量で供給していく必要に迫られている。流通構造が複雑で多層化していることが、競争力強化の制約要因となっているのも事実だ。

 加えて、ほかの業界と比較すると、IT化が遅れており、自社のホームページをもっていない中小企業が多いことも喫緊の課題となっている。

 アパレルウェブが提供するサイト「アパレルウェブ」は、こうしたアパレル業界の現状を打破するサイトとして注目を集めている。

 サイトで特徴的なのは、「業界総合ディレクトリサービス」。素材メーカーや縫製加工業者、デザイン会社、卸売業、流通業者など、アパレルに関係する企業情報データベースを無料で検索することができる。情報量が01年12月の時点で約1万件に達しており、企業としては、ビジネスパートナーを開拓することができるメリットがある。企業データの登録料は月額800円となっている。


 また、アパレル関連製品の「マッチングサービス」では、サイト上で商材、ブランド、在庫品などに関し、売りたい企業と買いたい企業を結びつける。人材のマッチングも行っている。

 千金楽代表取締役は、「アパレル業界に必要なのは、ウェブサイトを情報収集やマーケティングに活用すること。各アパレル関連企業が従来のビジネスモデル自体を変えることは、アパレル業界全体の効率化や活性化につながるのではないか」と見通し、00年5月にサイトでのサービスを開始したという。

 「開始当初は、アパレル業界のインターネットインフラが遅れていたという大きな壁にぶつかった。サイトのアクセス数は、月間で10万ページビューにも満たなかった」と当時を振り返る。そのため、同社ではホームページ作成やウェブに関するコンサルティングといったサービスを手がけ、インターネットがマーケティングに必要なツールであることを提案することに注力した。

 「インターネットは、電話やファクスと同様に、活用することで収益につながっていくことを提案していった」という。

市場拡大は業界活性化のカギ、アジア地域に需要あり

 ITの総合支援サービスが功を奏し、サイトはサービス開始後約1年半で、月間約280万ページビューにまで成長。そのうち6割が業界関連企業からのアクセスとなっており、現在では、ビジネスユースのサイトとして認知されている。「業界総合ディレクトリサービス」、「マッチングサービス」の両方ともに、大手企業から中小企業まで幅広く活用している。サイトでは、受発注機能がないものの、取引したい企業に電話やファクスなどで受発注を依頼するといった取引が行われている。

 最近では、大手企業からのウェブマーケティングに関するコンサルティングや、中小企業からのホームページ作成などといった依頼も多くなっているという。ホームページ作成では、昨年1年間で約100社からの依頼案件があった。

 「アパレル業界は、流行の移り変わりが早い。そのため、素材調達から製造、小売りまでの過程に時間をかけることは、過剰在庫などのリスクが大きくなる。情報収集やマーケティングを軸とした戦略で、いかに顧客ニーズにあった商品を低価格で提供できるかがカギとなってくる」と千金楽代表取締役は強調する。

 サイトでは、提携企業との協業により、業界関連企業の経営に役立つ経済情報や、国内外における業界の最新情報などを配信するといった取り組みもみられる。

 「当社のサイトは、アジア地域からのアクセスが全体の約20%を占める。中国や韓国、香港、台湾などで日本ブランドの需要があるのではないか。とくに、中国はWTO加盟が実現したことでマーケット開拓が現実のものとなっている」としており、今後はアジア地域に向けた余剰製品の流通仲介や、日本の情報配信、現地法人に検索プログラムを提供するなどといった展開を積極的に進めていく計画。今秋までには、アジアネットワークを構築させる構えだ。昨年には、EC関連企業3社との協業で、ネット支援団体「Ozen(オゼン)」を設立し、中小企業を中心にした企業間EC市場の開設にも力を入れている。

 「輸入を100とした場合の輸出の割合は、米国が45、フランスが60、イタリアが650に対し、日本は2で、輸出をほとんど行っていない状況にある。日本のアパレル業界が活性化するためには、積極的に輸出を行わなければならない」と指摘する。

 同社では、今年度の売上高を約1億円と見込んでいる。「来年度は6-7億円に拡大させる」と意気込む。
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