先端セキュリティ構築術

<先端セキュリティ構築術>第10回 セキュリティ・レスポンス

2002/01/14 16:18

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

 イギリスで発行されているコンピュータ・ウイルス専門誌「Virus Bulletin(ウイルスブリテン)」(http://www.virusbtn.com/)によって定期的に行われているウイルス検知率テストがある。

 シマンテック製品は昨年までに15回の「ウイルス検知率100%アワード(VB100%)」を受賞している。

 このテストは、すでに世の中に出まわり感染や被害を与えているウイルス「インザワイルド・ウイルス(In-the-wild Virus)を含む多数の不正プログラムに対し、各社アンチウイルス製品の検出率を中立的な立場から調査・発表している。

 最多である15回の検知率100%を達成しているのは、シマンテックが世界最大のトータルセキュリティ対策部門である「Symantec Security Response(シマンテック・セキュリティ・レスポンス)」を擁しているからである。

 シマンテック・セキュリティ・レスポンスは、不正侵入対策の専門家、セキュリティ・エンジニア、ウイルス対策の専門チームと、企業と個人ユーザーのために広範囲にわたる作業を行うグローバル・テクニカル・サポートチームから構成されている。とくにウイルス対策の専門チームだけでも世界4か国(日本、アメリカ、オランダ、オーストラリア)に研究所を設け、24時間365日休むことなくウイルスやワームなどの分析・監視を行っている。

 同時にコンピュータセキュリティの脅威に対抗するために、新しい技術の開発や研究にも取り組んでいる。一例を挙げると、一般的に既知のウイルスに対応するのは簡単だが、未知のウイルスへの対策は難しいと言われている。しかし未知ウイルス検知技術である「Bloodhound(ブラッドハウンド)」や未知の悪質なスクリプトを検知する「スクリプト遮断」などはセキュリティ・レスポンスの研究・開発の成果である。

 では、ウイルスに特化した研究機関だけでなく、トータルセキュリティの対策部門がなぜ必要なのであろうか。

 ウイルスや不正アクセスの被害は年々増え続けている。とくに2001年は記憶に新しい「バッドトランス」や「サーカム」など、感染力の強いワームが多数出現したため、被害件数も前年に比べ大きく増加した。なかでも昨年の8月に出現した「コードレッドII」と9月の「ニムダ」は複数の感染・攻撃方法をもつため、甚大な被害を及ぼすこととなった。

 コードレッドIIやニムダはメールやネットワークだけでなく、ソフトウェアの脆弱性(セキュリティホール)をも利用して感染を広げようとする。さらに感染したコンピュータに誰でもアクセスできてしまうような裏口(バックドア)を仕掛ける。

 このように複合的な感染・攻撃方法をもつ「Blended Threat(複合的な脅威)」に対しては、ウイルス対策だけでも不正アクセス対策だけでも完全に防御することができない。トータルセキュリティ対策に必要な技術と知識を集結して、インターネット上の潜在的な脅威に立ち向かう必要がある。(シマンテック・セキュリティ・レスポンス 主任研究員 林 薫)
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