どうなる? PCリサイクル

<どうなる? PCリサイクル>9.業界の意思統一

2002/01/07 16:18

週刊BCN 2002年01月07日vol.923掲載

不公平感の克服を

 メーカーは、産業構造審議会(産構審)パソコンリサイクル検討会で、幾度となく「(販売時徴収方式では)メーカー間の不公平が出てしまい、業界内での意思統一ができない」と訴えている。

 これに対し、座長の永田勝也・早稲田大学理工学部教授は、「メーカー間の不公平は、業界内部で解決してほしい」と突き放す。

 メーカーが考え出した譲歩案は、販売時徴収方式枠組みのなかで“唯一”不公平にならない「新品パソコンは将来充当企業内資金管理方式で、既販パソコンは従来通りの排出時徴収で対応する方式」である。

 新品パソコンについてはメーカー側も販売時徴収で「大した問題はない」という意見が多い。

 問題は、後半部分の「既販パソコン」の部分である。現在、家庭には約2500万台のパソコンがあり、このリサイクル費用は、「絶対に排出時徴収でしかあり得ない」と強く主張する。

 自治体などほかの委員は、「それでは、見た目は販売時徴収だが、実際の中身は従来通り排出時徴収と何ら変わらない。既販パソコンも販売時徴収の枠組みに収めるべき。排出時徴収では不法投棄時の担保にならず、生産者責任という見地からも的確ではない」と反発している。

 では、どうして新品パソコンは将来充当企業内資金管理で既販パソコンは排出時徴収でなければならないとメーカーは主張するのだろうか。

 まず、新品も既販もすべて販売時徴収方式とする反メーカー側の主張「“当期充当”企業内資金管理」の場合を考えてみる。

 仮に、年間100万台の新品パソコンを販売しているメーカーが2社あったとする。A社は、ここ20年間、パソコンを売り続けている老舗メーカーで、B社は今年5周年目を迎える新参メーカーだとする。同方式では、排出される自社パソコンをリサイクルする費用を単年度単位で充当する必要がある。

 A社は20年間の販売実績があるため、例えば来年度は100万台の既販パソコンの排出が予測されるとする。一方、B社はまだ5年間しかパソコンを売っておらず、家庭用パソコンの保有年数が平均13.8年であることを考えれば、少なくとも来年はまだ10万台しか排出されない。

 A社は、100万台の販売台数に新品パソコンのリサイクル費用と、その年に出てくる排出パソコンのリサイクル費用の両方を上乗せして販売しなければならない。リサイクル費用を1台3000円だとすれば、新品1台当たり6000円のリサイクル料の上乗せになる。

 一方、排出パソコンがまだ10万台しかないB社は、単純計算で3300円で済む。

 A社の場合、過去の販売台数が多いため、ピーク時には100万台の新品パソコンに、300-400万台の排出パソコンのリサイクル料金を上乗せしなければならない可能性もある。金額にして1万5000円である。

 A社にとって、B社とこれだけ価格差があると、年間100万台のシェアを維持することが難しくなる。A社はさらに少ない新品パソコンの販売台数で、何倍もの排出パソコンのリサイクル費用を補い続けることになる。B社が新品の販売台数を伸ばせば、結果的に1台あたりのリサイクル費用は、安く抑えられる可能性もある。

 新品も既販もすべて販売時徴収方式による「当期充当“外部委託資金管理”」の場合はどうなるだろうか。

 外部委託による資金管理とは、第三機関として管財法人をつくり、各メーカーが年間の新品パソコンの出荷台数に応じて新品と既販とを合わせたリサイクル費用を管財法人に支払う方式である。

 今度はわずか5年で年間100万台の販売台数を伸ばしてきたB社に不公平感が出てくる。新品の出荷台数を増やしているB社は、支払うべきリサイクル料金が多くなるうえ、「排出パソコンの大半はA社製。なぜ当社が肩代わりしなければならないのか」ということになりかねない。

 A社をNEC、B社をソニーと考えれば、より具体的なイメージが湧いてくるのではないだろうか。

 電子情報技術産業協会(JEITA)に加盟しているメーカーは20社を超えている。「当期充当企業内資金管理」にしろ「当期充当外部委託資金管理」にしろ10年も経てば、不公平感は徐々に減少する。とはいえこの先10年間もメーカー間に不公平感が出るやり方では、意見の統一は至難の業である。 (安藤章司)
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