大航海時代
<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第14話 常に問題意識をもつということ
2001/12/24 16:18
水野博之 高知工科大学教授 副学長
最近は若者と言わず老人も含めて本を読まないようだ。電車のなかでも、多くは居眠りである。座るや否や、たちまちにしてコックリ、コックリ。まさに真に達人の業で、毎日毎日の錬達のほどがしのばれるが、朝からコックリ、コックリなんてあんまり恰好のよいものではない。
そのコックリ、なかなか泰然とはできないもので、左に右に寄りかかる。妙齢の淑女が隣にしなだれかかるというのはいかにも無気力で情けないものだ。せっかくの化粧も泣こうというものである。
次に多いのは音楽を聞くというやつだ。この間は音楽と居眠りが一緒になった人がいて、しかも寄っかかってくる。プレーヤーの出来がよほど悪かったのか、音量が大きかったのか、ガアー、ガアーと喚く音が近づいたり遠ざかったりする。大変困惑した。
どうせすぐ眠るのならプレーヤーを切ったらよいと思うが、あれはあれで、子守唄になっているのであろうか。
なかには本を読んでいる人もいて、これは感心だ、と覗き込んで見るとこれが漫画である。漫画も時には悪くはないが、朝から「ギャハハハー」なんて絵を見ているのは、どうもその日1日の行く末が思われていささか心許ない。
なかにはごく稀だが、難しい本を熱心に読んでいる人がいる。電車のなかにまでそんなものを持ち込まんでもよいじゃないか、というひねくれた見方は横に置こう。
そんな人は、やっぱりしっかりした顔に見えるなぁ。要は本を読む、読まないにあるのではない。毎日、問題意識をもって、なんらかのものに立ち向かっているのかどうか、にあるのである。
毎日ノンベンダラリと過ごす人と、何か努力をし、工夫している人の違いは年齢とともに歴然となっていく。通勤の時間だって使いようによっては活きていくのだぜ。(仙台空港にて)
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