IPO後の財務施策

<IPO後の財務施策>8.ウェザーニューズ

2001/12/24 16:18

 大型タンカーなどの航路を決定するうえで、海上の気象情報は重要だ。安全で、しかも早く目的地に到着することは、コストにも影響する。気象に左右されるビジネスは意外にも多い。例えば、屋外イベントで数百人分の仕出し弁当が必要な場合、当日が雨天でキャンセルとなれば、翌日の開催地の天気を知ることで食材のロスを回避できる。気象情報は、あらゆる分野でその価値を高めようとしている。

 そんな気象ビジネスで世界シェアを押さえる企業が千葉の幕張にある。ちょうど1年前、ナスダック・ジャパンにIPO(新規株式公開)をしたウェザーニューズ。気象情報サービス会社のIPOは世界でも類を見ない。

 同社の歴史は1970年、米国オーシャンルーツ(67年設立)の子会社としてオーシャンルーツ日本社設立にさかのぼる。その後、86年にウェザーニューズとして独立し、すでに世界最大の海洋気象情報会社となった母体の米国オーシャンルーツを93年に買収。いまでは連結子会社16社、世界12か国に26拠点をもつグローバル企業に発展した。

 日本では93年の気象業務法の改正により、気象情報がこれまでの気象庁一極集中から次第に民間へと開放されてきた。国内での事業領域が格段に広がったほか、「洗濯指数」といった各種の指数を開発することで、天気予報に代わる新たな情報伝達方法を生み出し、いまでは民間のテレビ放送などを通じて広く定着している。

  安全という側面からもニーズが高い地方自治体の防災や建築現場向け、農業支援、電力、ガスなどのエネルギー事業を支援する気象情報サービスが売上全体の50%を占める。このほか、全国に約240のケーブルテレビ局に気象情報を提供するほか、独自に抱えるキャスターも派遣。個人向けにも有料コンテンツの提供やスカイパーフェクTVで独自の番組を流すなど、世界の気象コンテンツと自社媒体を武器に、企業、個人向けに防災、ビジネス、生活情報という特化したコンテンツに発展させ、収益機会を横へと広げている。

 2020年をメドに全世界の気象機関が民営化される方向にあるとし、気象情報の分野では独断場の同社にとって、サービスの領域はさらに拡大。最近では金融派生商品「天候デリバティブ」が登場し、天候ビジネスに参入する金融機関も現れている。そうした市場に対して「ジャパン・ウェザー・インデックス」という指標を、ロイター通信などの金融情報機関を通じて発信するなど、気象情報の付加価値が認知されてきた。

 世界シェアを握る同社が巨大なグローバル企業へと発展するまでの時間は加速度的に短縮している。(マーケットウォーク 鮎川 良)
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