ケン井上のWeekly Letter
<U.S.A.最新動向>10.本筋に戻るアップル
1997/01/20 20:29
昨年末も押し詰まった頃、アップルとネクストは、買収で合意に達した。その内容は、買収金額4億ドル(ほとんどが現金で支払われる模様)とネクストのCEOでアップル創始者の一人であるスティーブ・ジョブズ氏のアップルへの返り咲きである。ジョブズ氏は、アップルのアメリオ氏の元で、パートのアドバイザーとして働く。
アップルは、次期OSの開発にてこずっている。90年代初頭から開発を始めたコープランドは5億ドルもすでに投資したと推定されるにもかかわらず、まだ完成の目処が立っていない。
アップルは、新OSを完成させる突破口として、積極的に他社買収に目を向けていた。ネクスト買収の話が決定する前には、Be Inc.買収に動いていたが、買収額が折り合わずに、白紙に戻した経緯がある。
アップルがこのネクスト技術をどう利用するのかが、興味あるところである。アップルでは、ネクストとアップルの合作になるOSに早速、Rhapsodyというコード名を付けた。開発者には今年中に、製品の市場への出荷は来年になるという。
このようなアップルの動きに、業界では同社を見直す気運が出てきた。
アップルの見方は大きく分けて二つある。一つは、アップルらしさを保持し、独自性を表面に出し、PCとの接点はファイル変換だけというもの。もう一つは、コンピュータ・ハードメーカーの大手で、そのコンピュータは使い易く、PCと比較して良い物で、OSは標準に近いというものである。
このどちらの道にアップルの将来があるかと考えた場合、単なる変わったハードメーカーというだけでは、PCの力の前で生き残れそうにないことは見えてくる。そこでアップルも、本来の同社らしさで、今回、勝負して行くことに決めた。
では、ネクスト買収から、アップルらしい何が見えるのか。それはOSである。タッチとかフィールとか、今では一般に言われているが、それはもともとアップルOSのことだった。
やはり、アップルは他社とは一風変わっていないと存在価値がない。スティーブ・ジョブズ氏のアップル復帰は、同社の本質的な方向への転換になると期待されている。(ATT社長・ケン井上)
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