【1980年代のIT】コンピュータ・ディーラの夜明け
特集 大阪市場 パソコンVSオフコン(第6回)
1982/03/15 16:04
パソコン訪販には否定的意見も
パソコンのビジネス利用が少しずつ拡がっている。一方、オフコンの需要も拡大を続けている。パソコンとオフコン、同じコンピュータではあるが、販売形態には違いがあるようだ。その違いはどこか、今後、どう変化していくのだろうか。大阪のオフコン・ディーラー、パソコン・ディーラーを訪れた。拡大するパソコン市場
梅田から車で5分、大阪有数のホテルといわれるホテルプラザと道路を隔てて大塚商会の大阪支社がある。大塚商会はコンピュータでは日電と信州精器のオフコン、日電のパソコンを販売する。オフコンとパソコンの販売について森勝常務は、中級機以下のクラスのオフコンが売れていると現状に触れ、こう続ける。「今後は中級機以上の大手販売担当を設け、下位クラスはパソコンセールスでカバーしたい」
パソコンの裾野が拡大していくというのが森常務の捉え方である。これは、パソコンのビジネス利用が増えていくことでもある。パソコンが市場に出てから最近まで、その利用分野はホビイスト、マニアの趣味的色合いが強く、ビジネスに利用されるにしても事務処理ではなく計測制御などの分野に止どまっていた。それが製品に改良が加えられ、アプリケーションソフトが開発されるに及んで、事務処理を含めたビジネス利用へと進みつつある。このパソコンの豊かな市場性に家電店、通信機代理店、オフコン・ディーラーなど多くの企業が目をつけ、参入してきている。
日本橋の上新電機などは、1フロア約110坪で1階から3階までをパソコン中心の店舗、教室に当てるという熱の入れようである。梅田でも昨年末に日電のマイコンショップ・システムイン秋葉原が駅前第4ビルに東京から進出。隣の第3ビルでは今年2月1日にソフトハウスのセンコー情報システムが、NECマイコン・ショップとしてOAS大阪をオープンした。本町でも今年1月18日に通信機器代理店の日本電通建設がハード&ソフトNDKを開設した。これらのパソコン・ディーラーが異口同音に語るのは「狙いはビジネスユース」である。そのために訪販部隊も設けている。
販売形態の違い
オフコン・ディーラーの商談は3ヵ月から6ヵ月、長い場合は1年以上ということもある。営業マンが客先を訪問して契約を取りつけると、SEがシステム分析を行い、プログラマーがプログラミングし、テストラン、本稼動、CEによる保守、というのがオフコンの販売形態である。訪問販売の点ではオフコンも、ビジネス・パソコンも一見変わらないように見える。が、パソコンの場合、少なくとも過半数は「納品」的な訪販といえる。客先で商品説明やシステム設計をするような性格のコンピュータではない。そこにオフコンとパソコンの訪販の違いがある。
ファーストシステムの西沢弘光社長は「パソコンは店を張ってやる商売で、会社としての売上げを伸ばすにしては価格が低い」と否定的である。冨士交易の赤平清爾社長も「外販するにはパソコンは価格的に採算がとれないし、製品サイクルが速い。扱うとすれば専門部隊が必要」と語る。だがユーザーからの要望はある。これにどう対処するか、オフコン・ディーラーはその対策に迫られよう。こうしてみると、オフコンの販売形態はほぼ形が固まってきているが、パソコンは流動的なところといえる。大阪のパソコン・ショップは、ビジネス重視であり訪販指向にある。診販の成否や如可。
硬軟兼備?
コンピュータはハードウェアとソフトウェアがあって初めて用をなす。で、社名に「ハード」や「ソフト」をつける企業もでてくる。コンピューター・イレブンというパソコン・ショップの社名は㈱日本ソフト&ハード社という。本社は東京である。大阪にはハード&ソフトNDKというパソコン・ショップがある。関東はソフトを、関西はハードを、重視というわけでもないであろうが。ここで問題をひとつ。パソコン・メーカーにもこの種の会社がありますが、何という会社でしょう。やさしすぎたかな。
オフコンディラー 利益は低いがやらなきゃ損
大塚商会大阪支社 オフコン上位機を狙う
大塚商会が大阪に進出したのは昭和40年3月、創業後3年8カ月である。当時は支店で、貸しビルに入居していた。48年5月に梅田駅近くに第6大塚ビルを竣工と同時に支社に昇格、自社ビルで営業を行っている。現在の戦力は総勢220名、うちコンピュータ部門は75名である。75名の内訳はオフコン部門でSE25名、営業18名、CE7名、インストラクター12名、パソコン部門で営業5名、インストラクター5名、その他3名となる。
「オフコンはNECシステム20/25、30など中級機以下のクラスが売れている」(奔騰常務・大阪支社長)。大塚商会全社の全商品販売台数は年間約2万台、大阪支社の今期目標は3500台で、このうちオフコン300台、パソコン500台という。全商品の約23%をコンピュータで占める勘定になる。
オフコン、パソコンの今後の販売戦略では、オフコンは中級機以上を扱う大手販売担当を設け、下位オフコンはパソコン部隊が扱う。パソコンは裾野が広がり、上位パソコンと下位オフコンとはオーバーラップ度が進む、との見方からである。自社ソフト・PC-PALがパソコン販売の武器で「メンテは3通り程度の契約方式」を採る。契約方式の中味は現時点では明らかではないが「自社メンテが可能であり、機械を引き上げても翌日には(ユーザーに)持っていく」のが基本政策である。
立花商会さん下代理店を強化
大正10年9月、大阪南北区に電気絶縁材料・電気罷具の販売店として創業以来60年の歴史を持つ。設立は昭和23年7月。現在、資本金1億5000万円、年商約350億円、社員数450名の規模を有する三菱電機の総合代理店である。扱い商品は電気炉、熔接機といった産業用機械からモーター、半導体、照明機器、台所のキッチンユニット、エレベーター、エスカレーターまで広範に及ぶ。
オフコンは、総勢34名の電子計算機部が三菱のMELCOMシリーズを販売、年間売上げは約7億円である。ハード、ソフト、保守、サプライ全てを含む。「営業1に対し、SE3・5の比率で、CEは専任3名」(佐々木正也電子計算機部部長)というから、営業マンは10名足らずだが、同社のオフコン営業マンは実質的にはもっと多い。それは電算機部以外の営業マンが客先の情報をつかんできてくれるからで、随時こうした情報交換は行われている。
阪神地区だけで、立花商会の営業マンは約250名いる。彼らの持たらす情報量は少なくない。同社の信用取引先は1600軒あり、50%が製造業、40%が灘通業である。流通業の中には、立花商会のサブ店(二次店)も含まれている。「ことしの電算機部の目標は、有能な二次店を育成することと、生産管理ソフトの開発を進めること」オフコンだけでなく、パソコンにも乗り出すべく、新体制を整えている。
ファーストシステム 粗利の約70%はソフト
地下鉄の四ツ橋駅で降り、1~2分歩いたところにファーストシステムがある。四ツ橋駅周辺は、東京でいえば神田あたりか。オフィス街であるが、それだけではないという印象である。ファーストシステムの西沢弘光社長は、東芝のオフコン代理店組織である全国TOSM会の会長に先ごろ就任した。設立は昭和47年7月、資本金1000万円、社員数42名、年間売上げ10億円で、東京と兵庫に営業所を置く。オフコン専業代理店として、ことしで10周年を迎える。営業10名、SE15名、インストラクター5名のほかに、BP100など低価格商品営業5名および管理部門スタッフからなる。
ユーザーの80%は繊維、鉄製品の問屋で、規模としては社員50人以上の企業が多い。商談の中味は「平均850万円程度のシステムを売った勘定になる」(西沢社長)と、システム価格は中クラス以上である。また「粗利の70%近くがソフト売上げ」であり、ソフトの貢献度は高い。この背景には、オフコンが年々低価格下しているだげでなく値段で買うとも言われる大阪独得の市場性もうかがえる。同時に、ソフトウェアを重視するファーストシステムの経営戦略の表われでもあろう。
富士交易 無理な販売はしない
「オフコンは、月に4社はフォローできるが、それ以上はキツイ。ユーザーに活用してもらうためにも無理な販売はしない」と赤平清爾社長はいう。資本金360万円、社員18名営業7名、ソフト7名、ほか)年間売上げ約3億円である。扱うのはカシオのオフコンのみ。オフコン市場は「買替需要と新規需要が6対4でバランスがとれている」が、「カシオにワープロ機能がないことなどで他社から攻められることもある」と、苦戦する部分があることも隠さない。
ユーザーは50人から10000人企業が多いが、20人でも1000人でも会社の事務処理内容は同じで、ボリュームが違うだけ、と考えている。その前提で、コンサルタント・パソコンについては目下、社内外への対応策を練っている段階、専任部隊がいないこともあり、考え方としては「パソコン免許を持ってる人なら買って下さい」だという。
パソコンショップ 異口同音に狙いはビジネス
J&P(上新電機) 商品揃えは全国有数
電話をしたら応対に出た女性の声がこう告げた。〈まごころサービスの上新でございます〉。上新電機の社是は「愛」である。設立は昭和25年2月。創業(昭和23年5月)当初のラジオパーツ販売から29年には家電専門店に移行、現在は資本金13億7500万円、社員数1000名以上、年間売上げ約380億円である。47年9月に大阪証券取引所2部に株式上場、55年8月に1部上場している。
浪速区日本橋3~5丁目の堺筋には、本社を含めて5つのビルが建ち並ぶ。青地に白で社名を入れた大広告がそれぞれのビル屋上にあるだけによく目立つが、56年10月24日にはパソコンの一大ショップ「J&P」をオープン、日本橋6つ目のビルをつくった。1フロア110坪。1階に電子パーツ・通信機・ホビー用パソコン、2階にパソコン・PPC・WP・ファクシミリ、3階に4つのパソコン教室、4~7階は本社である。2階だけで約80台のパソコンがある。全メーカーが揃っている。壮観である。第1~3水曜日の定休日以外は10時~19時まで営業、「1~3階合計で一日、平均2000~3000名は来る」(勝田秋広店長)と耳を疑うばかりである。
教室は水、木曜以外の10時30分~17時30分まで開催、日電のPCを使い20名収容可能の第1教室、フリープレイルームで20名収容の第2教室、シャープのMZを使い18名収容の第3教室およびOA教室の4つ。受講料は1日6時間で初級5000円、中級7000円、上級8000円である。平日の午後2時頃の取㍍だったが、各教室平均で30%程度の混み具合いである。書籍からハードまで、品揃えの点では全国でもトップレベルといえよう。店舗運営上では「初心者の来店が多いため、分り易さを重視」している。店員は1階7名、2階8名、3階3名(講師は専任のプロ採用)である。
ハード&ソフト NDK 初年度目標は年商2億円
NECマイコンショップは、既に全国で100店以上に膨らんでいる。新規開店はなお続きそうだが、日本電通建設(本社大阪)がことし1月18日にオープンしたハード&ソフトもそのひとつ。日本電通建設は昭和22年10月の設立で資本金4億3000万円、年間売上げ約90億円、社員数500名以上の通信機器商社である。ショップ開設以前から同社ではファクシミリ、ワードプロセッサ、オフィスコンピュータなどの.販売を行ってきており、シ冒ラブ開設はオフコン部門の業務拡大といえる。ショップは広さ釣40坪、ビジネス街である本町の交差点沿いの扶桑ビル1階にあり、立地条件はいい。
販売方法は「店頭でも販売するが訪問販売も行う」(勝山行雄マネージャー)考えで、人員7名のうち4~5名は訪販、内勤2~3名と重点は訪販にある。対象は企業。ビジネス街を選んだのも、この地区にパソコン・ショップがないためだけでなく、企業が多いからだ。企業相手という点はパソコン教室でも同じで、PC-8001を7台設置した教室は、入門、初級、中級の3コースとも午後6時から2時間である。受講料は入門コースが2日間で3000円、初級コースが4日間で5000円、中級コースが4日間で7000円。同ショップは立地条件が良いため、家賃など経費がかかる。採算ラインに乗せるための年間売上げ目標は2億円である。
OAS大阪 ひと味違うOAショップ
大阪駅前第4ビルにもNECマイコンショヅプが2月1日にオープンした。情報処理のセンコー(株)の子会社センコー情報システム(株)が開いたもので、2階に22坪のショヅプ、5階に45坪の教室を持っている。教室はPC-8000シリーズを使用した20名収容可能のものと、PC-8800シリーズを使用した12名収容可能の教室の2つがある。OAS大阪の名の通り、ショップ内にはパソコンのほかにNEFAX301、同701、文豪、N5200-05ターミナルも展示されている。広さ22坪のマイコンショップとしては他と違った味を出している。ショップ6名、教室2名の合計8名で、このうち4名は訪販要員である。「狙いはビジネスユース」(出口清三郎チーフ・マネージャー)という。
システムイン秋葉原・梅田 25階の高層ショップ
大阪のパソコン・ショップは、梅田と日本橋で性格が異なる。梅田はビジネス指向であり、ショップと教室を併設している。一方、日本橋はショップのみが多い。昨年未から今年にかけて、梅田周辺はパソコン・ショップが急増している。コム・関西支社が大阪駅前第4ビルの25階にシステムイン秋葉原を開いたのは昨年11月。関連会社の中央ネファヅクス、ネオローダ電子も同時に入居しており、コム・関西支社長は中央ネファックスの塩田幸一社長が兼任している。
25階もの高さにあるパソコンショップは、ここくらいかもしれない。それでも1日の平均来客数は60人前後ある。学生、マニアがかなり多いがビジネスマンもいる。営業時間が午前10時から午後9時までと長いこと、大阪駅に近くて便利なこと、などが好調さの要因といえる。ショップの依さは約30坪、自由にパソコンを扱えるように設置されており、コーヒーも飲み放題である(ただし、セルフサービス)。教室は50名まで収容できる。PC-8000シリーズのフロッピーディスク付を使用。ビジネスユース対象である。講師は東京のシステムイン秋葉原から出張する。店員は5名、うち訪販1名である。月商はショップ売りだけで1000万円、これに卸販売分が加わる。
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