【1980年代のIT】パソコンの利用形態
勉強よりもまず導入(第6回)
1982/03/15 16:04
入門書よりもまず触れてみる
日常のオフィスでの事務処理において最も困っていること、従来のコンピュータによるデータ処理システムに積み残され、再三コンピュータ化を要請しても、なかなかコンピュータ部門が腰を上げてくれない業務がパソコンの対象業務である。さてこの業務をパソコンでやってみようと決心し、せいぜい100万円未満の購入予算のメドがついたら、パソコンの入門書など買ってはいけない。一日も早く自分の手元に設置することに努力すればよい。オフィスワーカがパソコンを導入するのはパソコンの専門家になるためではない。これがオフコン規模以上のコンピュータを導入する場合と大きく異なる点である。
組織的データ処理を目的にコンピュータを導入するには、その処理量、タイミング、ファイル・ボリューム等の検討が必要で、導入するシステムの最大限の能力を知り、対象業務に対して最もコスト・パーフォーマンスの良い機種を選定する必要がある。この場合にはその導入機種の全機能を知り、日常少くなくともその能力の70~80%を利用するように心がけなければならない。それに対しパソコンは、自分の処理したいと考える業務に関連する機能だけを覚えればよい。例えば自社の商品の受給見込客の管理をしたいとしよう。日常業務に特殊なソフトは不要。
営業マンから日常出てくる見込客リストにもとづいて、客先名、住所、機種、価格、受注予定日、担当セールスなどを登録できる入カプログラムと作表プログラムを作るだけで良い。ここでプログラムという表現をとったけれども、パソコン利用の大きな柱となりつつあるノンプログラム・ソフトウェアを使えばよい。ベーシック言語やコボル言語は極めて特殊な業務処理にしか必要なくなった。
一級品のノンプログラム・ソフトウェアを用いれば、自分の頭にえがく帳票をパソコンのテレビと対話しながら鉛筆と定規の代わりにキーボードを操作するだけで、たちどころにその帳票はテレビ画面上にできてしまう。あとは入力すべき素データをゆっくりでよいから一件一件入れて行くだけだ。素データは発生順にランダムに入れればよい。年月日順、地区別、セールスマン別にソートするのはパソコンの役目である。単に並べ換えるべきキーの指定と、「SORT」という指令を与えてやるだけでよい。出力帳票の項目はオフコンからの管理資料のように横の項目を欲ばる必要はない。重点的に見たい項目を中心とした出力は、必要ならその都度指令を与えてやれば得られる。
ノンプロ言語ならその日から専門家
パソコンは何度もいうように個人がやりたい業務、個人がほしい帳票を好きな時に自由にとり出せることに大きな導入の意義がある。導入するのに事前に入門書やプログラム・マニュアルを勉強する必要はなくなった。相当専門的に使うのでなければ、メーカーや代理店が開催するパソコン教室に通う必要もない。パソコンそのものを手元に置きさえずれば、操作やノンプログラム・ソフトウェアを独習できる学習プログラムも一部の機種では提供されるようになった。一日も早く自分の手元に置けば、パソコン教室に行かなくても、多分次の日ぐらいから自分のやりたい業務の一部を、パソコンで気軽に処理できる時代が来つつある。人気のあるメーカーのパソコンは半製品であるハードウェア単体を個々のユーザの短時間の独習を加えることにより、処理手段を内包した完成品にするよう工夫されている。売り方も大きく変化しつつある。買う方もその買い方を大いに改めなくてはならない時代がきた。
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