【1980年代のIT】拡大するパソコン 販売店の明日は?
定まらぬ流通経路 メーカー戦略に不満も
1981/10/15 16:04
週刊BCN 1981年10月15日vol.1掲載
わが国のパソコン市場は、4、5年前に米国メーカーの輸入商品が登場したのを機に芽ばえた。コモドール、タンディ、アップルなどが進出する一方、わが国では精工舎、キヤノンの技術計算用パソコン・メーカーのほか、日本電気やシャープが参入、続いて日立、沖電気、今年になって富士通、東芝がビジネス処理分野に進出した。さらに今後は、三菱電機、松下電器が参入、コンピュータの巨人IBMも米国ですでに発表、日本IBMが発売するのも時間の問題と見られている。
このような大手家電、コンピュータ・メーカーの進出で、パソコンの普及は加速度的に増大している。日本電子工業振興協会(片山仁八郎会長)がわが国で初めて行ったパソコンの出荷状況調査を見ると一目瞭然である。同調査は国産パソコン・メーカー(東レのアップルを含む)19社を対象に実施したもので、それによると出荷台数は1978年度1万台だったのが、1979年度4万5000台、1980年度には11万台にも達している。また出荷金額でも1978年度約60億円、1979年度約160億円と増え、1980年には約340億円にも急伸している。
さらに1981年度には33万台、1100億円に達するものと推測している。これは調査対象の19社を基本としており、今年度から出荷する新規参入メーカーを含めると、その数字はそれ以上になると見られている。このようなパソコンの爆発的な伸びは、IC、LSIなど半導体に代表されるエレクトロニクス技術の急速な発展による機能・性能の向上、信頼性の向上、小型化、低価格化というものが基本的な原因となっている。
加えてオフィス・オートメーション(OA)熱の高まりで、パソコン需要の中心が普及当初のホビー用から、ビジネス用に移行しており、企業における部課単位での採用、個人商店など零細企業の導入と、すそ野が太きく膨らんできているためである。造れば売れる、売れればスケールメリットを追求でき、価格は下がる。するとさらに市場は拡大しさらに大きなスケールメリットが出る……という相乗効果を生み出しているのがエレクトロニクス技術を採用した最近の家電や事務機である。パソコンもこうした道を歩み始めており、「電卓の二の舞」という声さえあがっている。
量販品扱いは危険
しかし、パソコンが家電や事務機と違うところは、あくまでもコンピュータであるということで、バカチョンカメラと違い利用技術ソフトウェアが非常に重要な点である。価格帯、需要層を見ると量販商品といえるが、コンピュータのソフトウェア・パッケージの育ちにくいわが国の土壌においては、ハードウェアのパソコンを売りっぱなしのできる量販商品と決定づけることは、危険をともなう。つまりパソコンは家電などの量販商品とコンピュータの間に存在するコウモリのような商品に位置づけることができる。
それだけにパソコン・メーカーはパソコンの専業販売店づくりを進める一方で、家電ルートの開拓オフコン・ディーラーの利用、事務機販売店の開拓など、幅広い販売網づくりを進めている。しかし、パソコン販売店ではこうしたメーカーの販売政策に不満の色を見せはじめているのも事実である。さらに掘り下げると、パソコンの多岐にわたる販売ルートから、パソコン専業販充店、家電量販店、オフコン・ディーラー、情報処理サービス業、事務機・通信機代理店など、それぞれに販売方法、販売対象などが違い、不満の声もさまぎまなようだ。
本稿では『拡大するパソコン、販売店の明日は?』のテーマで、急速に普及するパソコン市場に焦点をあて、パソコン販売店がパソコン販売に乗り出さなければならなかった原因、流通に対する意見、メーカーに対する不満を探るとともに、今後のパソコン市場の変化を読み、いかに対応しようとしているか─など、販売店を中心にしたパソコン市場の現状と将来を分析・予測する。
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