三菱総合研究所は、官民で議論を進めている電力とデータセンター(DC)の設備投資を連携させる「ワット・ビット連携」の現状と課題を分析した。生成AI需要の高まりで、DCへの電力供給量が向こう数年で数倍に増える見込みであることを受けて、再生エネルギーを含めた「電源開発」と「DC新設」を連携させる必要性が高まっている。
課題については、発電所の建設には10年単位の時間がかかるのに対して、DCは数年以内でサービスを始めないと変化著しいAI需要に応えられない「投資リードタイム」が大きく違う点を挙げる。ほかにも太陽光や風力、原子力など脱炭素電源は北海道や九州などの地方圏で確保しやすいのに対し、DCは大都市近郊の立地が好まれる隔たりを指摘している。
これらの課題を踏まえて三菱総研では、「生成AI時代のDC地域分散シナリオ」を作成。「シナリオ1」は東阪集中型の現状にプラスして脱炭素電源の潜在力がある北海道や九州にDCを増やす。「シナリオ2」は全国10の電力会社の管内にDCを分散させる。「シナリオ3」は47都道府県すべてにDCを設置する案を提示。
西角直樹 主席研究員
シナリオ1は遅延が許されないリアルタイム計算を大都市圏のDCで処理。そうではない場合は、例えば生成AIの学習処理を北海道や九州のDCで行うといった使い方を想定。また、脱炭素電源が豊富な地方にDCを設置することで「脱炭素の目標値を掲げるユーザー企業の需要に応えられる」(西角直樹・主席研究員)利点がある。シナリオ2は電源とDCをできる限り連携させる考え方で、シナリオ3はコンテナ型など小型DCを配置して地産地消型のデータ処理を目指すものとしている。
(安藤章司)