金沢市の北國フィナンシャルホールディングス(FHD)の杖村修司社長は、マルチクラウドで開発を進めている次期コアバンキングシステム(勘定系システム)について、2027年1月に稼働する見込みを示した。新システムは現状の「Microsoft Azure」に加え、「Google Cloud」上にも導入して可用性を向上させるとともに、クラウドネイティブなシステムとして近代化を進める。稼働後の外販も計画する。
開発に意欲を見せる(左から)BIPROGYの葛谷専務、
北國FHDの杖村社長、リンクスのモハメッド社長
1月28日に都内で会見が開かれ、杖村社長のほか、共同開発するBIPROGYの葛谷幸司・専務執行役員CSO、勘定系の近代化に強みをもつスタートアップのリンクスのオサムニア・モハメッド社長も登壇した。
北國FHDの中核となる北國銀行では現在、BIPROGYのパッケージ「BankVision」をクラウドリフトしたシステムを利用している。枝村社長は新システムの狙いはモダナイゼーションであると強調し、COBOLを使った現状のシステムは「これからの5年、10年を考えると耐えきれない」と指摘。言語の刷新によって、開発や運用の人員の削減、コーディングやテストの自動化といった恩恵が受けられるとした。
北國FHDはAzureとGoogle Cloudで構成するものの、実態としては特定のクラウドプラットフォームに限定しないシステムを目指す方針だ。
新システムは北國FHDが掲げる「次世代地域デジタルプラットフォーム」の中核を担う。顧客の有するシステムなど外部ともつながることで、地域全体の経済基盤としての役割を目指す。顧客のクラウド会計システムとの連携によって、キャッシュフローなどを基に自動で融資を判断・実行できるようになるなどのケースが考えられる。
葛谷専務は、開発するシステムがBankVisionの事実上の後継になるとの見方を示し、金融機関だけでなく、異業種からバンキングシステムに参入する事業者も見据え「スピード感をもって、安価に提供できるプラットフォームを構築したい」と述べた。モハメッド社長は「マルチクラウドで勘定系を動かすのは、おそらく日本初の試みだ。しっかり実現できるよう手伝いたい」と語った。
(藤岡 堯)