NTTデータと米Oracle(オラクル)は10月23日、ソブリンクラウドサービスの強化に関する協業を発表した。NTTデータはオラクルのクラウド基盤「Oracle Alloy」を自社データセンター(DC)に導入し、既存のクラウド基盤サービスである「OpenCanvas」の機能を拡張する。国内SIerとしての高品質なセキュリティー対応に、ハイパースケーラーが有する生成AIなどの多様なサービスやスケーラビリティーを加え、より使いやすいサービスへ強化したい考えだ。新サービスは2025年12月末に東日本リージョンで開始する予定で、同社は30年に新サービスを含めたOpenCanvas全体で売上高1000億円を目指す。
(藤岡 堯)
OpenCanvasはNTTデータが金融業界での運用実績や各種サービスで培った技術などを基に開発され、IaaSとしてミッションクリティカルな要件を満たせるカスタマイズ性や、柔軟な運用・保守、閉域網を含む広範なネットワークへの接続性などを特徴とするほか、リージョン指定、立ち入り監査、データ消去証明など、一般的なパブリッククラウドでは難しい対応も可能としている。Oracle Alloyは顧客のDCに「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の環境を構築し、運用も顧客側で実行可能なサービスで、国や地域の規制を順守しながら、最先端のクラウドサービスを利用できる。
NTTデータ 新谷哲也 執行役員
今回の協業により、ユーザーは国内にデータを保持し、データ主権が担保されたOpenCanvasの環境で、新規のサービスを迅速に構築し、自社でカスタマイズした独自サービスとともに、OCIのIaaS、PaaSサービスの利用が可能になる。
24日に都内で開かれた日本オラクルのイベントには、NTTデータ執行役員の新谷哲也・テクノロジーコンサルティング事業本部長が登壇し、協業の背景について語った。近年は経済安全保障の観点から、ソブリンサービスの需要が高まっていると指摘。一方で、AIをはじめとした最先端のソリューションの活用や、より素早いシステム構築を実現するためにもパブリッククラウドを利用したい顧客は増えていることから「第3の選択肢を設けなければニーズに応えられない」として、オラクルとの協業によるAlloyの導入を決めたという。
日本オラクル 三澤智光 社長
具体的なサービスの提供形態については、インフラ基盤そのものをAlloyとしたり、NTTデータの基盤を活用しつつ、必要とするサービスに応じてAlloy上のOCIへと接続したりといった複数のかたちが考えられ、詳細については今後詰めていく。新谷執行役員は「NTTデータが持つDCや運用の強みと、Alloyの要素を掛け合わせ、お客様の新たなニーズに対応したい」とアピールした。日本オラクルの三澤智光社長は「Alloyを直訳すると『合金』を意味する。オラクルとパートナーと一緒により良いサービスを提供したい」と話した。
東日本リージョンへの展開後、27年3月末までに西日本リージョンでの提供開始を予定し、将来的にはグローバルでのサービス展開も見据えている。目標とする売上高1000億円については、国内だけでの規模となる。現状の売上高は公表していないが、Alloyの貢献分は300億円ほどを見込む。対象となる業種・業態は特に定めていないとし、AI技術の進展に伴い、よりデリケートなデータの管理や処理を必要とする業界に幅広く展開する方針で、クラウドサービスの提供にとどまらず、インテグレーションやサポートなどの付加価値も訴求していく。