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NECパーソナルコンピュータ米沢事業場でPC組み立て作業などへのロボット活用を推進 「Smart Manufacturing」で工場全体の45%を自動化へ
2024/03/21 09:00
週刊BCN 2024年03月18日vol.2006掲載
(取材・文/堀 茜)
米沢事業場は1984年からNECブランドのPCを生産しており、NECと中国Lenovo Group(レノボ・グループ)がPCの合弁事業を立ち上げた後、2015年からはレノボのノートPC「ThinkPad」の一部機種の生産を開始。現在はデスクトップPC「ThinkCentre」などの生産も行っている。約2万通りの多品種生産に対応しており、ノートPCで24ライン、デスクトップPCで6ラインの計30ラインが稼働し、年間約100万台を生産。最短3日で納品する体制を敷いている。
簡易的作業から先行して実施
自動化の取り組みについて生産事業部の塩入史貴・事業部長は、短納期での生産には効率化が必須だとして「生産ライン全体の中で比較的簡単な作業から自動化を取り入れてきた」と説明。工場内でものを運ぶ、積む、梱包するといった作業プロセスを整理し、自動化を実現してきたという。具体的には、届いた部品の段ボールを開梱する専用の機械や、出来上がった製品を梱包する段ボールを自動で組み立てるロボット、配送のため製品をパレットに乗せるためのパレタイジングロボットなどを導入。作業スピードが上がり、4人程度で行っていたものが1人で可能になるといった省力化の効果が出ており「生産ライン全体の20%にあたる作業を自動化している」(塩入事業部長)。
21年から活用しているパレタイジングロボットは、首都圏向けをはじめとして、出荷台数が多いエリア向けのパレットの積載に利用している。薄型のノートPCは製品を持ち上げる際にハンドルを下から差し入れるなど、製品ごとに最適な取り扱いができるよう調整した。レールを移動させ複数のパレットに振り分けて積むこともできる。出荷数が少ないエリア向けには手作業でパレット積み込みを行っているが、生産台数が増加した際にはロボットの稼働を増やして対応する。
パレットに積まれた完成品は、バーコードの自動読み取り装置によって、リスト出力を自動化している。出荷のためにパレット上の製品をビニールで固定する際に、ビニールを巻き付ける回転台と、コードリーダーが上下に移動する仕組みを組み合わせ、製品のバーコードを短時間で読み取れるようにしている。これはレノボとしてもグループの中で初めての取り組みで、海外拠点からも関心が集まっているという。
工場全体での効率化アップのために、作業の切り出しも行っている。従来は、組み立てが終わった後に、梱包する段ボールなどを組み立てたり添付品を同梱したりといった梱包工程を同じライン内で行っていたが、梱包工程のみを専門ライン化。部品のピックアップ段階で、添付品などをそれぞれの製品に合わせたキットとして構成。これを梱包専用ラインに供給して、組み立てが終わった本体と組み合わせている。PC組み立てラインでは、本体の組み立て作業に集中でき、全体の生産台数が増加したなどメリットが出ているという。梱包ラインや出荷ラインの自動化がさらに進めば、これらの作業を夜間など時間外に行うことも可能になると見込んでいる。
組み立てで人とロボットの協業へ
今後目指すのは、組み立てラインでの自動化推進だ。現在は、組み上げた製品にがたつきがないかチェックする工程や、カメラによる外観チェック作業など一部を自動化しているが、「本体にメモリーやコネクターを差し込む作業は、熟練した技を持つ人でないと難しい部分がある」(塩入事業部長)。PCは新製品が次々投入され、デザイン面で多様性があることも、組み立て作業全体の自動化が難しい要因だという。同事業場では、組み立てを補助する小型のアームロボットを導入しようと、試験的にロボットを加えたラインのシミュレーター設計を進めている。人と共存して作業者をサポートする協業ロボットという位置付けだ。組み立てラインに協業ロボットを導入することで、工場全体の自動化率を45%にすることを目指す。24年度下期に本番ラインに設置できる見通しで、25年度以降、導入数を拡大する。
塩入事業部長は、組み立て作業の100%自動化は難しいとした上で、「人の経験値と自動化を組み合わせた仕組みを模索していくことになる。マニュアルとオートメーションによるハイブリッドなスマート工場を目指す」と述べ、人の経験値とロボットの効率性を最適なかたちで組み合わせ、生産性向上を図るとした。
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