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JBグループ、ローコード開発比率7割へ SI事業の粗利率40%を視野に入れる
2023/07/27 09:00
週刊BCN 2023年07月24日vol.1978掲載
(取材・文/安藤章司)
独自の開発フレームワークを確立
JBグループの23年3月期の営業利益は前期比22.1%増の37億円と過去最高となり、24年3月期までの3カ年中期経営計画で掲げた営業利益目標を1年前倒しで達成した。一翼を担ったのがローコード開発を駆使した主力のSI事業の“稼ぐ力”の強化にある。中核事業会社JBCCのSI事業の粗利率は22年3月期は35.5%だったのに対して、中計最終年度では37.5%に高まる見通し。次期中計1年目に当たる25年3月期には40%を目標に掲げる。従来のウォーターフォール型の受託開発でのSI事業の粗利は20%台が限界と言われるなか、粗利率を大幅に高められたのは「ローコード開発による納期短縮、SE稼働率の向上、不採算案件の抑制によるところが大きい」と、JBCCの内田義隆・取締役専務執行役員サービス事業担当は話す。
JBグループのローコード開発は、ウルグアイのローコード開発ツール「GeneXus(ジェネクサス)」をベースに、同社独自の開発フレームワーク「JBアジャイル」の手法で構築する。JBアジャイルは、要件定義から試作、完成まで複数の段階でユーザー企業に操作感を確認してもらい、想定と異なっているようなら、ユーザー企業が納得するまで試作を繰り返すプロセスを重視している。
基幹業務システム担う重点4業種
ウォーターフォール型では厳密に要件定義を行い、開発フェーズに入ったら仕様変更は原則として受け入れないのが一般的だが、実際はユーザー企業の事業環境が変わったり、業務プロセスが見直されたりすることは少なからず発生する。JBアジャイルの手法で試作を繰り返すことで「ユーザー企業が本当に求める要件を引き出し、顧客満足度の向上や品質の高さを実現できるようになった」と、JBCCの川上明治・上級執行役員サービス事業SI事業部長超高速開発センター長は話す。過去9年間で約460社のユーザー企業でローコード開発の実績を積み、そのノウハウをJBアジャイルの開発フレームワークに反映してきた。業種別の構成比を見ると製造業が31%、卸売業・小売業が25%、教育・学習支援業が25%、金融・保険業9%、その他と続く。このうち鉄鋼と食品製造、建材卸、学習塾の重点4業種のユーザーでは商談規模1億円を超える基幹業務システムの構築を担っている。基幹システムの主要モジュールをマイクロサービスとして部品化し、類似業種で再利用することで納期短縮と品質向上に役立てている。重点業種は今後も増やしていく考え。
JBグループではSI事業の協力会社にもローコード開発の案件に参加してもらい、基幹システムのアセットの活用、JBアジャイルを習得した中核人材を育ててもらうことを目的にパートナー戦略を展開。ローコード開発の参加経験がある65社を対象として、直近で18社にパートナーになってもらった。24年3月期までに25社に増やす目標を立てる。
SI子会社でもJBアジャイルを実践
これまでを振り返ると、「ローコード開発を本格的に始めてから、適用率が高まらない時期があった」(川上上級執行役員)。従来の開発手法に慣れた技術者や、JBグループが強みとしてきたIBM製サーバーのIBM i(旧AS/400)系の開発体系などが残っており、ローコード開発に切り替えるきっかけがなかったからだ。そこで21年10月、JBアジャイルの標準化作業を担っていたセンターを昇格させ、その下に主力SEが所属する全国のSI事業部門を配置するかたちに組織を改編。既存システムの改修やユーザー企業が開発手法を指定しているなどJBアジャイルを活用できない部分を除いて、「半ば強制力をもってJBアジャイルを実践するよう各部門に働きかけた」(川上上級執行役員)ことで、24年3月期のSI売上高のうちローコード開発の占める比率が7割近くまで達する見通しとなった(図参照)。
また、JBグループではコロナ禍期間中に徹底したリモートワークを奨励。オンラインでの開発が主流となったことで、東京の案件に地方勤務者が物理的に移動することなく参加できたり、逆に東京に勤務しながら地方の案件に参加したりすることでSEの稼働率が向上。ローコード開発によって納期を半減させたことも相まって、「より多くの案件をこなせるようになった」(川上上級執行役員)。主要なSI子会社で中部地区を担当するシーアイエス(名古屋市)、九州地区を担当するソルネット(北九州市)でもJBアジャイルやリモートワークを実践し、グループ全体のSI事業の粗利率の拡大につなげている。
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