DX事業の強化に注力する富士通と、コンサルティングサービスを推進するレッドハットが協業する。富士通が実施するアジャイル開発プロジェクトに、レッドハットのコンサルティングサービスを組み合わせ、戦略設定からビジネスの実践までをトータルで提供する。富士通はレッドハットからコンサルティングノウハウを、レッドハットは富士通から開発人材の供給を受ける形のパートナーシップとなる。
(日高彰)
(左から)富士通の浦元克浩理事、
大西俊介執行役員常務、レッドハットの金古毅副社長執行役員
富士通は近年、受託開発型のシステム構築事業から、デジタル技術を活用して顧客の変革を促すDX支援事業へのシフトを図ろうとしている。同社でグローバルソリューション部門副部門長を務める大西俊介・執行役員常務は、DXの推進にあたっては「アジャイル思考の組織風土に変える、ビジネス・業務プロセスを変える、マネジメントスタイルを変えるなど、経営層や事業部門が取り組むべき要素がいくつもある」とし、システムのモダナイズやアジャイル開発の導入といった技術面での取り組みだけでは、十分な成果をあげることはできないと指摘する。
そこで富士通では、顧客の新規ビジネスに必要なシステム開発だけでなく、ビジネスの戦略策定や、仮説を立案し検証しながら改善していく、アジャイル手法を用いたビジネスの実践を一貫して支援するサービスを4月1日から提供する。事業規模の目標は、2022年度からの3年間で2000億円と大型だ。このサービスを立ち上げるため手を借りたのが、オープンソース技術大手のレッドハットだった。
レッドハットは現在、コンテナ基盤の「OpenShift」や運用自動化の「Ansible」といった製品を主力としているが、富士通とは03年からLinuxの取り扱いで提携関係にあり、ここ数年はOpenShiftを活用したマネージドコンテナ管理サービスを富士通が開始したり、富士通のエンジニアによるコンテナ技術の習得をレッドハットが支援するなど、アジャイル開発に近い領域での協業を強化していた。
また、レッドハットではデジタル技術を活用したビジネス変革を支援するコンサルティングサービス「Open Innovation Labs」を提供しており、経営層や事業部門へのアジャイルコンサルティングノウハウを豊富に有している。このことが評価され、富士通のDX事業を早期に強化するにあたり、パートナーに選ばれた。レッドハットでパートナーエコシステム事業本部長を務める金古毅・副社長執行役員は「我々自身は開発リソースを持たない会社だが、富士通との協業によって、お客様をよりエンドツーエンドでサポートできるようになる」と話し、Open Innovation Labsによる経営層へのコンサルティングと、顧客の現場における開発体制の支援を一体のサービスとして提供できるメリットを説明した。
富士通は近年、グループ全体のシステム開発機能を「ジャパン・グローバルゲートウェイ(JGG)」と呼ぶ組織に統合し、プロセスの標準化などを通じた開発効率向上を目指している。JGG本部長の浦元克浩・理事は「DevOpsの技術要素の能力やサービス体制を集約し、それらを統合したデリバリーモデルをJGGで推進していく」と述べ、今回の協業によるサービスの中で、JGGがアジャイル開発の実働チームを務めることを強調した。富士通グループ各社の開発部隊を順次統合してきたことで、JGGは今年4月には7000人規模の組織になる。アジャイルコンサルティングの導入によってDX事業を拡大することで、JGGの活動を強化・高度化することも今回の提携の狙いと言えそうだ。