ダイワボウ情報システム(DIS、松本裕之社長)は昨年11月22日から26日までの4日間、販売パートナーなどを対象にしたオンラインイベント「DIS WORLD Digital Days 2021 Vol.2」を開催した。
同社は毎年夏、全国各地を巡業する形態で年次イベントの「DISわぁるど」を開催してきたが、2020年は新型コロナウイルス感染拡大を受けて中止に。21年2月に初の試みとしてオンライン版を開催し、今回はその第2弾。テーマは、コロナ禍の先を見据えてデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた準備を行う「DX-Ready」で、「クラウド」「セキュリティ」「コラボレーション」「デジタル」の4カテゴリに分けてITソリューションや事例の紹介が行われた。
各日行われた基調講演では、DXによって社会にどのような変化がもたらされ、中堅・中小企業とそれらにITを提供するベンダーの役割がどう変わるか、識者が解説した。
基調講演を行ったデジタル庁の津脇慈子企画官
2日目にはデジタル庁の津脇慈子・企画官が登壇し、「誰一人取り残されないデジタル社会の実現」を目指す同庁の取り組みを紹介。津脇企画官は、DXが求められる背景として、ビジネス環境の不確実性が高まっていること、生産年齢人口の減少が続き人手不足が恒常的な課題となっていることを挙げる。
加えて、企業や行政など日本のさまざまな組織で縦割り化の弊害が発生しており、新たな価値を創造するのに適した形態になっていないことを指摘。供給者目線ではなく、ユーザー側のニーズに合致したサービスを提供するには「垣根を越えた共感をいかに作っていくのかが重要」(津脇企画官)とし、同庁でも目的ごとにチームを構成する柔軟な組織作りや、民間から大規模な人材登用を行ったことを紹介した。
また、各省庁や自治体の間で情報システムの連携が取れていないために、コロナ禍に見舞われる中で質の高い行政サービスを提供できなかったとの反省があるとし、デジタル庁が音頭を取って政府・自治体のシステム基盤やデータ仕様を整備する方針を説明。そのうえで「ITインフラのすべてを国と特定の業者が作るものではない」と述べ、一定の基準のもとで全国のITベンダーが力を発揮することで、初めて国全体のデジタル化が実現すると強調した。
3日目の基調講演では、日本デジタルトランスフォーメーション推進協会の森戸裕一・代表理事が、ITベンダーが顧客の変革をリードする「DX企業」になるには何が必要かを解説。森戸代表理事は「ムラ社会の中で考えても予定調和になるか、過去の成功体験からしか考えられない」と話し、デジタル庁の津脇企画官と同様、垣根をこえたコラボレーションが重要になるとの見方を示す。社内だけでDXを議論しても「変革は容易ではない」との結論に達する可能性が高いが、社外や、従来と異なる地域・業界とのコミュニケーションを活発化することで、「新しい仕掛け作り」の力を身につけていけると説明した。
DISは今回のイベントに合わせて、企業におけるDXの理解と実践を促進する「DX教育サービス」を発表した。デジタルツールの導入・活用と、ビジネスモデルや企業文化の変革を支援する教育プログラムを提供し、中堅・中小企業のDXを後押ししていくという。(日高 彰)