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脂質同定ソフトウェア「LipidSearch」の新バージョン、三井情報から
2020/11/26 16:03
LipidSearchは、10年に東京大学大学院医学系研究科 田口良特任教授(当時)と三井情報が開発して世界30カ国で利用されているソフトウェアで、これまで手動で行っていた脂質のデータ分析プロセスを自動化し、構造が不特定で多岐にわたる未知な脂質(未知脂質)の発見に寄与してきた。今回、新しい機能を追加することで脂質の網羅的な解析・解明を加速させ、医療・創薬分野の研究だけでなく、食品や化粧品の機能性評価/商品開発を支援していく。
具体的には、「データベースカスタマイズ」「Infusion解析機能」「LC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)同定機能の強化」「アラインメント機能の強化」の4つの機能を追加した。
LipidSearchの脂質仮想構造データベースは、独自の脂質計算アーキテクチャーを用いて150万種以上の脂質が登録されていることが強みだったが、新バージョンではさらに柔軟なデータベースカスタマイズ機能を搭載した。ユーザーは脂質基本骨格、脂肪酸鎖、付加イオン、修飾基などの部分構造をSMILES記法で自由に定義でき、LipidSearch 5.0はこれらの定義した部分構造の組み合わせを計算、多様な脂質の構造を視覚的に表示する。また、既知脂質かどうかを公共データベースLipidMaps Structure DataBaseに照合する機能も追加し、より効率的な脂質分析が可能となった。
Infusion解析機能では、LC(液体クロマトグラフ)の成分分離を経ないInfusionデータに特化した同定アルゴリズムを追加した。このアルゴリズムは、ガウスモデルを用いて同位体ピークを分離させ、分離させた同位体ピークで混合物スペクトルの組成式を高精度に同定するアルゴリズムを実装している。さらに、InfusionのMS2スペクトルからの脂質構造同定、プロダクトイオンの強度情報を用いた定量分析までを成分分離を経ずに実施することが可能となった。
LC-MS同定機能では、これまでLC-MSで脂質を分離する際に、同一分子式で構造の異なる異性体のピークが同時溶出(共溶出)し、MS2スペクトルに混在することで正確な同定が困難となっていた。新バージョンでは、MS1クロマトグラムをGaussian Fittingで成分ごとに分離し、MS2スペクトル中のプロダクトイオンピークを各成分クロマトグラムに分類するデコンボルーションアルゴリズムで混合スペクトルからも正確な脂質成分の同定を行うことが可能となった。
アラインメント機能では、試料中の脂質成分の比較定量分析を行う際、異なる測定間で保持時間がずれるため、とくに多検体でのアラインメント解析でピークの対応付けの誤りが発生し、定量分析が困難となっていた。新バージョンでは、脂質クラスごとに保持時間のずれを補正するアルゴリズムを実装し、正確な定量分析を行うことが可能となった。
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外部リンク
「LipidSearch」=https://www.mki.co.jp/solution/lipidsearch.html