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米ガートナー、20年の世界の5Gネットワーク・インフラ支出は約2倍と予測
2020/07/29 16:45
同社では、20年の世界の無線インフラストラクチャ支出総額は4.4%減の381億ドルに達すると予測する。5Gネットワーク・インフラストラクチャへの支出は、19年には通信サービス・プロバイダーCSP)による無線インフラストラクチャ支出全体の10.4%を占めていた。20年にはこの数字が21.3%に達する見通し。
アナリストでシニア ディレクターの瀧石浩生氏は、「無線インフラストラクチャへの投資は引き続き促進されていく。LTEと4G投資の削減、無線周波数帯域、基地局、コア・ネットワーク、トランスポート・ネットワークなどの既存資産を再利用しながら、5Gプロジェクトを優先するCSPが増えている。先進国で5Gを早期に商用化したCSPの存在は、世界での5G競争を激化させている。それらに加えて、政府や規制当局はモバイル・ネットワークの開発を促進しており、モバイル・ネットワークが多くの業界で幅広い経済成長の『触媒』となることを期待している」と述べている。
CSP間の競争の激化が、5Gの導入ペースを加速させている。新しいO-RAN(Open Radio Access Network)とvRAN(仮想化無線アクセス・ネットワーク)のエコシステムは、現在のベンダー・ロックインを打破し、将来的にはコスト効率が高く俊敏な5G製品を提供することで、5Gの採用をさらに促進する可能性がある。ガートナーは、中国(中国、台湾、香港)、日本を含むアジア太平洋地域の成熟国、北米のCSPによる5Gの人口カバー率が、23年までに95%に達すると予測している。
瀧石氏は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響で、20年の5Gの成長率は中国と日本以外の地域で20年第1四半期の調査時よりも若干縮小している。一方で、すべての地域のCSPは5Gネットワークとプラットフォームとしての5Gを構築するために、裁量的な新規支出を迅速にそちらへ振り向けている」としている。
短期的には、中国が5G開発で世界をリードしており、20年での世界の5G投資の49.4%がこの地域に該当している。中国で製造された費用対効果の高いインフラストラクチャは、政府の支援や規制上の障壁の軽減と相まって、中国の主要なCSPが5Gのカバレッジを迅速に構築するための道を開いている。「しかし、他の早期導入国や技術的に成熟している国が後れを取っているわけではない」(瀧石氏)という。
通信ネットワークへの依存度の高まりに端を発した行動の変化をCSPが利用しようとしているため、5Gへの投資は21年に緩やかに回復すると、ガートナーは見ている。5Gへの投資は、22年にはLTEと4Gを上回ると見込まれる。
CSPは、非スタンドアロンの5Gネットワークにスタンドアロン機能を徐々に追加していき、23年までには世界のCSPの15%が4Gネットワーク・インフラストラクチャに依存しないスタンドアロンの5Gネットワークを運用するようになるとガートナーは予測している。これにより、無線への投資がLTEと4Gから5Gに急速に流れ、レガシーRANインフラストラクチャへの支出が急速に減少することになる。
なお、瀧石氏は、日本の状況について、「日本は5Gをリードする先頭集団の国の1つといえる。とくに、CSPによるO-RANとvRANの早期商用化、企業によるローカル5Gの導入は世界に先駆けて行われている。日本発のエコシステムが世界に影響を与える可能性があり、注意深く見守っている」と補足している。
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