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新型コロナウイルス、日系ITベンダーは中国事業への影響を懸念
2020/02/06 11:40
高まる警戒感
「新型コロナウイルスの影響はいつまで続くのか」。日系ITベンダーの駐在員は、連日、感染者が増え続け、厳戒態勢が続く中国国内の状況に肩を落とした。中国では2019年12月から、湖北省武漢市で肺炎患者が確認され始めたとされている。その後、30億人が移動するといわれる春節休暇を迎え、感染は中国全土に拡大。日本など海外にも広がった。
事態を重く見た中国国務院は、ウイルスの拡散を防ぐため、1月30日までの春節休暇を2月2日まで延長。中国メディアのまとめでは、2月1日までに、上海市や北京市、湖北省、広東省など計21の省・市で、企業に対して休業を求める通知が政府から出た。
日系ITベンダーにも、休業の影響が出ることが予想され、各ベンダーが警戒を強めている。この駐在員は「3月の年度末までに契約できる見込みだった案件は、もう難しいだろう」とし、「この状態が長期化するならば、20年度全体の計画を考え直さなければならない」と懸念している。
業務は縮小傾向
企業の休業期間は、2月2日~2月13日と各省・市によってさまざまで、最も多いのは2月9日まで。同日まで休業となった上海市では、休業期間中に従業員を勤務させる場合、2倍の給料を支払うことが定められた。従業員を勤務させるにしても、人混みでは感染のリスクがある。また、企業が入居するビルが休業となる場合もあるため、多くの日系ITベンダーは、在宅勤務で対応。現地スタッフの人繰りについて、別の駐在員は「厳選に厳選を重ねた」と説明した。
外務省は2月4日現在、中国全土を感染症危険情報レベル2(不要不急の渡航中止)とし、湖北省を感染症危険情報レベル3(渡航中止勧告)に設定。1月31日には、世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を出した。
こうした動きを踏まえ、一定数の日系ITベンダーは、休暇で日本に帰国中の駐在員に対し、中国への渡航を当面、見合わせるよう指示。早めに駐在員を現地に戻した日系ITベンダーは、在宅勤務を指示したり、地下鉄やバスの利用を禁止したりしている。
日系ITベンダーの業務は、しばらくは縮小傾向となる可能性が高い。駐在員の1人は「社長直下のリスク対策本部が設置され、しばらく外出や外食などが禁止となった。2月10日からは通常営業だが、感染リスクが高いとの専門家の意見で、営業開始後の業務は縮退運転だ」と語った。
横のつながり
新型コロナウイルス関係で、中国の政府当局は、国営のテレビや通信社による報道に加え、SNSアプリの「WeChat」(ウィーチャット)を活用し、企業の対応方法などの情報を発信した。政府からの情報は通常、中国語か英語だけの場合が多いが、今回は日本語の翻訳版もあり、政府が事態を深刻に捉えていることがうかがえた。ただ、駐在員が少ない場合、現地での情報収集は難しく、日系ITベンダーの横のつながりが情報収集の面で役に立った。
上海の日系ITベンダーは、ウィーチャット内のグループチャットで、業務に直接関係する政府からの通知に加え、帯同させている家族の帰国状況や子どもの学校の開始時期などの情報を交換し、対応を検討する際の判断材料にした。
中国だけでなく、日本にいても通信環境があればチャット内の会話に参加できるため、グループに入っている駐在員は「本社に対応案を提示するときに、同業他社の情報はとても役に立った」「政府方針や各社の対応に加え、生活関連情報も共有できたため、不安を払拭することができた」と話した。
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