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アシスト RPAの提案を強化し自動化ニーズに応える 自社導入で大幅な業務時間削減を実現
2020/01/16 09:00
週刊BCN 2020年01月13日vol.1808掲載
テストツールは優秀なRPAである
近年アシスト(大塚辰男社長)はRPAツールの提案を強化している。同社が提供するのは「Unified Functional Testing(UFT)」。基本機能としては画面キャプチャによりユーザーの操作を記録し、同じ動作を実行してくれるもので、もともと機能テストツールとして開発された。すでに日本市場で15年以上の歴史があり、導入実績としてはアシストだけでも約730社に上る。一方で、テストツールをRPAとして押し出していくことについて東日本技術本部システム基盤技術統括部技術1部・矢野英也課長は「確かに製品の出自はRPAではないが、画面を記録し処理を実行するという機能自体はRPAと同じもの。われわれがあえてテストツールだと前置きをして使い方を制限する必要はなく、また製品の品質としてもRPAとして十分利用できるものだと自負している」と話す。実際、RPAが本格化する以前からマスターデータの登録やファイルのダウンロードといった用途で業務自動化を実現するケースも多かったという。
同製品の特徴は「使いやすさ」と「対応範囲の広さ」そして「回復性」の三つ。
RPAの中でも同製品の位置付けとはRDA(ロボティックデスクトップオートメーション)にあたる。デスクトップ上の作業自動化をメインとしており、ユーザーの操作によって処理を覚えさせるため、ビジネス部門のエンドユーザーでも利用することができる。開発言語といったスキルを必要としないことから社内での普及もしやすく、カスタマイズが必要な場合はVBScriptを使用した開発も可能だ。
また、同製品はWebアプリケーションだけでなく、クライアントサーバー型のアプリケーションや、端末エミュレーターソフトにも対応している。Javaや.NETなどで開発された業務アプリケーションにおける自動化は一般的なRPAでは難しいとされるが、同製品は画面キャプチャに加えオブジェクト認識で操作を記録するため幅広い環境やアップデートなどによる変化に強いという。
同製品では処理にエラーが発生した際、別ルートから処理を再開する回復機能を標準で搭載している。いかに処理を中断させないかはRPAにおいて重要な要素の一つ。夜間の処理でエラーが発生しそれ以降の処理が行われなかった場合、業務に大きな支障が出る。本来、エラーからの回復は膨大な開発が必要になることが多く、同製品であれば少ない工数で止まりづらい自動化のプロセスを構築できる。
今後アシストでは「業務自動化」の提案を大きく強化していく方針で、UFTはその一環としてデスクトップでの自動化を考えている企業へ向けて販売していく。矢野課長は「RPAが幻滅期に入ったと言われる中で、ユーザー側でもできることとできないこと、やりたいことがはっきりしてきている。そういったユーザーに向け、ニーズに応じた製品やサービスをしっかりと提案していきたい」と意気込む。
自社導入で430時間以上の削減
従業員を単純作業から解放し、よりクリエイティブな業務に集中してもらえる環境を構築することはソリューションを提供するITベンダーにとっても重要な課題となる。アシストでも働き方改革といった社会背景に沿った企業構造への改革を進めていたものの、その実行部隊である人事管理部門において膨大なルーチンワークが阻害要因となっていた。特に、勤怠システム内のデータを抽出し、加工する作業において多くの時間を割いていたという。そこで19年1月から、自社で販売・サポートをしているUFTを社内にも導入。人事管理部門内での業務時間の削減を目指している。
ツールの選定にあたっては、UFT以外のRPAツールのPoCも行ったという。しかし、導入先の部門でよく利用するクライアントサーバー型アプリケーションでの動作が不安定で、この業務に適応できないと費用対効果が見込めないことから採用を見送った。また、プロジェクトを指揮した経営企画本部企画2部人事管理課の川口琢央氏は「業務の中には複雑な関数を用いたExcelの上での処理もしていて、ここまでカバーするためにはUFTも含めRPAでは難しかったため、Excelのマクロ実行ツールも導入することにした」という。このマクロ実行ツールとの親和性が高かったこともUFTを採用した大きな決め手になっている。
導入して最初の2~3カ月は仮想環境の構築などインフラ回りの整理に専念し、4月前後から適用する業務の洗い出しを開始した。チーム内のヒアリングから効果が高いと思われる業務をピックアップしつつ、まずは川口氏の周辺業務から自動化したという。9月頃には自動化業務の人員を増やし、活動をより本格化。勤怠管理だけでなく給与や社会保険の処理まで適用範囲を広げ、現在では年間で430時間以上の削減を実現している。その結果、業務改善の提案などクリエイティブな業務へ割く時間を創出できているという。
導入・運用で苦労した点として「変数や分岐といったRPAを扱う上で必要な基礎知識を勉強することが大変だった」と川口氏は振り返る。問題が発生する度、IT担当者や社内の製品サポートに問い合わせたほか、自ら調べることでできるだけ自力で解決していったという。「多くが個人で解決できる範囲内の内容だった。そこさえ乗り切れればUFTはとても扱いやすいのではないか」と川口氏は強調する。現在、人事管理部門内での取り組みはロールモデルとして蓄積しており、その他の部門への横展開の可能性も見えてきた。川口氏は「まずは年間500時間の削減を目指していきたい」と語った。(銭 君毅)
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