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上海ハイロンソフトウェアの包董事長、「日本向けのオフショア開発はまだ伸びる」

2019/11/14 18:30

 【上海発】中国の日本向けオフショア開発は、急速な経済発展に伴う人件費の上昇で、以前のようなコストメリットは少なくなり、一時の盛り上がりはなくなったといわれている。日本向けから離れる地元の開発会社もあるなか、上海市で長年にわたって日本向けオフショア開発を手掛けてきた上海海隆軟件(上海ハイロンソフトウェア)の包叔平董事長は「日本向けのオフショア開発はまだ伸びる」とみている。

上海ハイロンソフトウェアの包叔平董事長

 包董事長が日本向けオフショア開発に本格的に取り組み始めたのは、2000年代初頭から。バブル景気が終焉を迎え、日本の企業のIT投資が縮小されるなか、「これからは中国で日本向けオフショア開発が盛り上がる」と予想していたからだ。

 予想は的中し、中国の日本向けオフショア開発は全盛の時代を迎えた。包董事長によると、日系企業から大規模な案件が舞い込むようになり、他社でも日本向けオフショア開発を手掛けるようになった。開発会社は乱立し、上海市だけでも200~300社になっていたという。

 だが、徐々に中国国内の開発案件が増加。08年のリーマンショックに端を発した世界的な不況の影響もあり、日中で開発単価の逆転が起こるようになった。包董事長は「リーマンショックの影響がなかった中国では、開発会社が日本向けから中国国内向けにシフトする動きが出始めた」と振り返る。

 中国では近年、人件費の上昇が続いている。それに加え、13年ごろには為替が急速に円安元高に進み、開発会社の経営を圧迫した。そのため、包董事長は「下流工程の仕事を中心としていた今までのやり方では難しい」と判断し、より上流工程まで手掛けることにした。その一環で17年に研究開発の専門チームを設置し、開発力の強化を進めている。

 包董事長は「今は技術の転換期。クラウドやビッグデータ、人工知能(AI)といった先端領域では、中国のほうが日本より進んでいる部分もある」とし、「われわれは約3000人の技術者を抱え、これまで培ってきた開発のノウハウもある。先端技術の要素を開発に加えることで、新たな価値を生み出すことができる」と話す。

 上海ハイロンソフトウェアは、18年までの5年間で、売上工数を順調に拡大した。14年に1万7840人月だった工数は、18年は2万1850人月となった。日本向けオフショア開発は下がり目になったともいわれているが、19年の工数はさらに増加し、3万人月に達するという。

 包董事長は、日本向けオフショア開発を手掛ける地元の開発会社が減ったことに加え、日本のIT人材が不足していることも影響していると分析し、「今後も日本からの案件の受注は期待できる。日本向けオフショア開発のビジネスチャンスはまだある」とみている。

 一方で「開発力を磨くだけでは、利益は確保できない。日本向けオフショア開発をさらに伸ばすためには、要件定義から開発まで一貫して顧客にかかわることが重要だ」とも。現在、中国側で開発者の採用を強化しているほか、日本の拠点では業務知識を備えた人材の採用を進めていると説明し、「日中で連携して全開発工程を担えるようにして、日本向けオフショア開発のさらなる成長を目指す」と強調した。
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