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富士フイルムHD、米ゼロックスの買収を断念、こう着状態から抜け出す
2019/11/06 14:03
発端は、2018年1月31日、富士ゼロックスと米ゼロックスを経営統合するため、富士フイルムHDが米ゼロックスの株式50.1%を取得することを発表したことから始まる。当時、米ゼロックスは経営不振に陥っており、それを機にした経営統合だった。
そもそも、渦中の富士ゼロックスは、富士フイルムHDが50%、当時の英国企業であったランク・ゼロックス(現、米ゼロックス)が50%出資して62年に設立した事務機器メーカーだ。その後、出資率は富士フイルムHDが75%、米ゼロックスが25%となった。
富士フイルムHDは自社が保有している富士ゼロックスの全株式を6710億円で富士ゼロックスに売り、その資金で米ゼロックスの新株発行61億ドル(約6710億円)を買おうとしていた。
米ゼロックスとはその内容で合意を得ていたが、米ゼロックス買収に反対する米ゼロックス側の株主が買収差し止めを求めて提訴。さらに、株式総会で新たに経営陣を選任すると、買収契約破棄を表明させた。これに対して、富士フイルムHDが米ゼロックスに契約破棄の損害賠償請求を起こし、2社の関係は泥沼状態に陥っていた。
この状態から抜け出すため、富士フイルムHDは米ゼロックスの買収を断念。代わりに米ゼロックスが持つ富士ゼロックスの株式25%を計23億ドル(約2530億円)で買い取り、富士ゼロックスを100%子会社化する方針を明らかにした。本件の取り行き完了は19年11月中の予定だ。
富士フイルムHDは、富士ゼロックスを100%子会社化することで、富士フイルムグループ内での連携を強化する。例えば、富士フイルムグループが保有する画像処理技術と、富士ゼロックスの言語処理技術を組み合わせてメディカル分野の診断レポート生成に生かすなど、製品・サービスを展開し、成長領域で事業を拡大する考えだ。
一方、富士ゼロックスの100%子会社化後に、米ゼロックスに対する損害賠償請求を取り下げる。さらに、米ゼロックスと欧米市場を含むワールドワイドでOEM供給の拡大を可能にする新たな契約の締結、富士ゼロックスによる米ゼロックスへの中長期的な製品供給の継続などを盛り込んだ新たな契約を結ぶ。
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