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事業創出を支えるデータ連携基盤を構築 実装期間4カ月でデータ活用の質が飛躍的に向上――横河レンタ・リース
2019/02/07 10:00
週刊BCN 2019年02月04日vol.1762掲載
従来のレガシーシステムでは現在のビジネスに耐えられない
高倉敏行執行役員情報システムセンタ長は、「最近はハードの価値が落ちてきている。当社はメーカーではないため、ハードに付加価値をつけることができない。単にモノを貸し出すのではなく、機器の運用や管理といった『利用』の周辺にある多くの煩わしさをサポートすることで、サービスの価値を高めていきたい」と説明する。そして新事業をスムーズに立ち上げ、業務を回していくためには、基幹システムにあるデータとサブシステムにあるデータを連携させ、新たなアプリケーションをスピーディーに作っていく必要があるという。しかし、社内システムは老朽化が進んでいた。2017年までは、基幹システムに「IBM i(旧AS/400)」を利用し、「IBM Notes(Notes)」を連携させて周辺業務をカバーしていた。特にNotesは、社内に技術者がおらず、「いわゆる塩漬けの状態だった」と高倉氏は語る。新たな取り組みを始めたくても、ビジネス部門からの要求に応えられる状況ではなかった。Notesのアップデートはコストに見合わないと判断し、社内システムの刷新を計画。まずは、Notesをクラウド型のアプリケーション開発プラットフォーム「kintone」に変更することになった。
その際、基幹システムであるIBM iと新たに導入したkintoneを連携させなければならない。従来のオンプレミス環境と新たに導入したクラウドサービスを安全に接続する基盤が必要になるのだ。情報システムセンタ・システム開発運用部第一課の早田明雄主任は「基幹系の情報をサブシステムの中でいかに上手に展開していくかを考えたとき、連携基盤というのは非常に重要になってくる」と強調する。
連携基盤が社員の意識とデータ活用の質を高める
そこで同社が導入を検討したのが、データ連携ソフトウェアの「DataSpider Servista(DataSpider)」と、オンプレミス・クラウド間をHTTPSプロトコルでリアルタイムかつセキュアに接続する「Thunderbus」である。もともとデータ連携ツールを導入していたが、大容量のデータに対応できていなかったため、DataSpiderを採用することにした。これをThunderbusと組み合わせることで、別途、ハードやネットワークを用意することなくデータを連携できるようになった。実装期間は4カ月程度。DataSpider導入時点で17本のインターフェースを作成し、kintoneの上に作られるアプリケーションが増加するのに合わせて、現在も増え続けている。
高倉氏は「これまでは、基幹システムのデータをExcelで出力したり、プリントアウトし転記したりと、ひと手間かける必要があった。それが、ダイレクトに情報を引っ張ってこれるようになり、データ活用の質が飛躍的に向上した」と語る。kintone以外に新たにクラウドサービスを導入することになった場合でも、すでに連携基盤ができているためスムースなリプレースが可能になるという。
また、副次的な利点もある。「社員の多くが『データを連携することで業務を効率化できる』という考え方を持つようになった」と早田氏は指摘する。これまで、情報システム部門の高倉氏らが提案をしてきたものが、現場側から上がってくるようになっているという。データ連携基盤を中心に、全社でテクノロジーを活用していく土壌ができはじめたのだ。高倉氏は「文化とまではいかないが、思考は確実に変わった」とその効果を評価している。(銭 君毅)
アジャイル開発を起点に企業活性化
横河レンタ・リースでは、連携基盤の構築に際し専門チームを結成。アジャイル方式を取り入れることで開発サイクルを加速させている。kintoneの導入当初は、従来通りウォーターフォール型で開発を進めていたが、「kintoneが持つアプリケーションの提供スピードについていくことができず、現場は疲弊していた」と、早田氏は振り返る。その後、他社のアジャイル方式による開発現場を見学したのを機に、データ連携チームでも導入することにした。まず、これまでExcelで管理していた1カ月計画のWBS(ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャー)を、ホワイトボードを使ったタスク管理に変更した。計画作成や組み直しにかかる時間短縮で、一人当たり月7~8時間残業を減らすことができたという。空いた時間を使い、チームの成果を社内に発信したり、社外セミナーに参加してスキルアップを図っているほか、獲得した知見を社内勉強会などを通じてフィードバックしている。その結果、全社でITに対する理解が進むとともに活気が生まれているという。
早田氏は「以前の辛さが嘘のよう。小さな成果物を積み重ねることでプラスの循環ができた」とし、アジャイル開発については「まずは導入してみることが大事」と強調する。その上で「うまくいかないことがあっても、すぐに改善策を打てるのもメリットの一つ。良質なコミュニケーションを確保し、チーム全体で取り組んでいくことがポイントになる」と語った。
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