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四国のベンチャーがタクシー業界を変革 クラウドで配車システムなどを提供――電脳交通
2018/12/13 15:00
週刊BCN 2018年12月10日vol.1755掲載
電脳交通の近藤洋祐・代表取締役は、祖父から引き継いだ徳島のタクシー会社「吉野川タクシー」の社長でもある。体調を崩した祖父に代わり10年に入社。乗務員としてタクシーに乗りながら、経営の立て直しに尽力した。3年ほど乗務員として勤務し、そこで見えてきたタクシー業界全体の課題がコールセンター業務だという。
タクシーの営業方法は道路を走りながら営業する「流し」、駅などにタクシーを止めて利用者を待つ「付け待ち」、そして電話による呼び出しに対応する「無線」の三つがある。近藤代表取締役は「地方では無線による売り上げが8割と大きい。しかし10~20台の小規模なタクシー会社では電話に対応する専任スタッフをなかなか置くことができない。吉野川タクシーも同様で、私は昼に乗務員、夜は電話番をしていた」と人材不足の厳しい状況を身をもって体験したという。
近藤代表取締役が独自に調べたところ、全国約6300社あるタクシー会社のうち7割が小規模タクシー会社だった。そこでタクシー会社のバックオフィスをITで効率化するため、15年にエンジニアと二人で電脳交通を立ち上げ、クラウド型のタクシー配車システムを開発した。同システムは、クラウドと全地球測位システム(GPS)を組み合わせ、小規模事業者でも効率的な配車システムが低コストで利用できる。またシステム導入企業に対して、クラウド型タクシーコールセンターサービスも提供する。
このサービスは、契約したタクシー会社にかかってきた電話を電脳交通のコールセンターに転送し、専任のオペレーターが対応する。独自の顧客管理システムでは着信があった電話番号と顧客情報を紐づけており、オペレーターは顧客の名前、乗車場所などの情報をタクシーに設置した端末に転送。乗務員は端末を使って乗車場所までのナビゲーションを受けることができる。
さらにDBには、顧客ごとの特性などの細かい情報も登録している。「地方のタクシー利用者は高齢者が多く、また長年同じタクシー会社を利用しているケースが多い。到着したらインターフォンを鳴らしてほしい、といった顧客ごとの要望や、いつも行く病院の場所などを登録し、丁寧な対応ができるようにしている」と近藤代表取締役は説明する。
こうした地元に密着したタクシー会社のニーズに応えるサービスを提供することでシステムを利用するタクシー会社が順調に増えている。「18年度の伸び率は300%ほど。コールセンターサービスも順調で、徳島のほか、岡山、福岡にもセンターを開設し、9府県で展開している」と近藤代表取締役は話す。
タクシー会社から生まれたタクシー関連ソリューションは急激な成長と普及を遂げている。(山下彰子)
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