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「ノートPCは国産がいい」と思わせる安曇野工場の風景 JCSSA工場見学ツアー同行レポート――VAIO
2018/11/29 07:00
週刊BCN 2018年11月26日vol.1753掲載
法人向けへの注力が原動力
VAIOがソニーから分離・独立したのは14年。当初はほとんどが一般コンシューマー向けPCだったが、法人向けへの注力が原動力となり、独立2年目で営業黒字化を達成した。直近の17年度では2桁の増収増益と過去最高益を達成するなど、好調をキープ。それを支えているのは、PC事業の約7割を占めるようになった法人向けの売り上げである。同社が法人向けに注力するのは、技術力と品質がより生きる市場であるとの考えからだ。個人がPCを日常的に利用する機会は減っているが、ビジネスの現場では利用頻度が高い。それも壊れず快適に利用し続けられるPCが求められる。VAIOが注力するモバイルPC分野は、さらにその要求レベルが高くなる。同社は、こうした市場ニーズに応えてきたというわけだ。また、新幹線などの静かな場所での利用を考慮し、キーボードの打鍵感を維持しつつ、打鍵音を抑えるといった法人向けならではのこだわりも、ユーザーの支持を得るポイントとなっている。
企画から保守まで安曇野品質
VAIOは、企画からアフターサービスまで、安曇野工場のワンストップ体制で対応している。国内で設計し、海外で製造するという体制では、試作や量産の段階で仕様の変更や追加などが発生しやすく、トータルではコスト高になりやすいとの判断である。VAIOではPC事業のほかに、ロボットなどの生産を担うEMS事業、VR(仮想現実)などを手掛けるソリューション事業を展開。これらの事業でもワンストップ体制のノウハウを生かし、国内での事業推進を実現している。
ツアーでは、こうしたVAIOの取り組みの紹介を受け、工場内を見学。11月13日に発売を開始した2in1モデルの「VAIO Pro PA」や、バンダイのAIロボット「ガンシェルジュ ハロ」の生産ライン、試作機のテスト工程を担う機材などを視察し、VAIOのものづくりを学んだ。ツアーに参加したJCSSAの松波道廣専務理事は「細部まで、よく考えられている。法人向けのPCはコンスタントに使用するので耐久性が大事。試験の工程は、なるほどと感心させられた」と感想を語っていた。
“すり合わせ型ものづくり”を追求
ワンストップ体制でものづくりに取り組むVAIOだが、中でも上流の設計プロセスに重点を置いている。上流がしっかりしていれば、その後のプロセスがスムーズに流れるためだ。VAIOの松山敏夫・執行役員常務は、「各プロセスのエンジニアやスタッフが一体となって、商品企画から参加する。これにより、量産に当たって考慮すべきポイントや製品のアピール方法などの準備を企画段階で進められる」と説明し、この取り組みを同社では“すり合わせ型ものづくり”と呼んでいる。2in1モデルのVAIO Pro PAで採用した「Stabilizer Flap(スタビライザーフラップ)」は、そうした取り組みにおける成果の一つである。「2in1モデルは、タブレット部分が重いため、安定させるためにはキーボード部分を重くする必要があった。モバイル用途であるなら、軽くすべき。そこで、キーボードが軽くても安定するように、Stabilizer Flapを開発した」。2in1モデルながら、総重量は約1kg。すり合わせ型ものづくりで実現した製品だ。
JCSSAのツアー参加者にはVAIO Pro PAに触れてもらい、意見を交換した。「機能だけでなく、手触りまで確認していただいた。当社にとってもいい機会になった」と松山常務。VAIOの工場を見学したいというオファーは、海外からも数多くきているという。そのため、工場見学のプログラム化も計画しているとのこと。「当社の妥協のないものづくりを見てもらいたい」と、松山常務は見学ツアーをビジネスパートナーの拡大に活用していく考えだ。
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