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“マークの予言”は脅威の的中率!? 米オラクルのハードCEO、新たな予言は「AIの浸透」

2018/10/26 17:42

【サンフランシスコ発】米オラクルはサンフランシスコで10月22日から25日にかけて年次プライベートイベント「Oracle Open World 2018」を開催した。2日目にあたる23日午前中の基調講演にはマーク・ハードCEOが登場。エンタープライズITビジネスを取り巻く環境の変化を解説した。「クラウドの次は、AIによる自動化がエンタープライズITの世界を大きく変える」というメッセージを強く打ち出した。

マーク・ハードCEO

 ハードCEOは2015年、Oracle Open World 2015の基調講演で、25年のIT業界に関する「五つの予測」を発表した。「アプリケーションの80%はクラウド上で稼働するようになる」「2社のアプリケーションスイート・プロバイダーがSaaS市場の80%を占めるようになる(そのうち1社はオラクル)」「新しいアプリケーションの開発・テストは100%クラウド上で行われるようになる」「ほぼ全ての企業のデータはクラウドに格納されるようになる」「エンタープライズクラウドは最も安全なIT環境になっている」というものだ。

 そして翌年のOracle Open World 2016では、「80%のIT予算はクラウドに使われる」「企業のデータセンターの80%はなくなる」「CIOはIT予算の80%をイノベーションのために使うようになる」という三つの予測を追加した。さらにその翌年、Oracle Open World 2017では、より近未来の予測として、20年までに「規制が厳しい業界でも生産ワークロードの50%がクラウドにシフトする」「90%のエンタープライズアプリケーションがAIを組み込むことになる」などと指摘した。

 今回の基調講演でこれらの予測に再度触れたハードCEOは、「当時は多方面からかなりの批判を浴びた」と振り返った。その上で、フォーブスの記事や調査会社であるガートナー、フォレスターリサーチのレポートを引き合いに出し、「17年から18年にかけて、アナリストもメディアも結局は私の予測と同意見になった」と、自らの見解の信ぴょう性の高さを強調。これまでの予測は主にクラウドの普及・浸透に関するもので、オラクルがクラウドビジネスに注力する必然性の裏付けだったわけだが、「クラウドは予測以上に成長しており、昨年だけでも法人が所有するデータセンターの15%が減り、クラウドサービスプロバイダーが提供するサービス上にシステムを移行している。現代のビジネスではこれがスタンダードになっていることを認識すべき」とした。

 ハードCEOはさらに、「では、クラウドの次の世代でモダンビジネスに大きな影響を与える技術要素は何か。それはAIだ」とコメントし、AIに関する新たな予測を発表した。25年までに「全てのクラウドアプリケーションにはAIの機能が含まれるようになる」「顧客とのやり取りの85%は自動化される」「AIは顧客とのやり取りに関する業務の85%を強化する」「ITに関する仕事の60%はまだ世の中に存在しておらず、25年までに顕在化する」という。ハードCEOが強調したのは、「AIは独立した要素ではなく、アプリケーションやシステムの核となる機能として、あらゆる業務を変えていく」ということだ。「AIは人間の業務を自動化して時間を短縮する。膨大な情報、データ、知識を活用し、業績の成長やコストの節約、さらには意思決定にAIが影響する」として、ERPやHCM、SCM、カスタマーサポートソリューションなどで、すでにそのメリットは明確になってきていると指摘した。

 実際に、Oracle Open World 2018では、AIを活用したSaaS製品の機能拡充が発表されているほか、ラリー・エリソン会長兼CTOは前日の基調講演で、AIを活用した自律型データベース「Oracle Autonomous Database」がこれからのオラクルのポートフォリオの核になる技術であることを改めて強調した。ハードCEOは「Autonomous Databaseによってデータベース管理者はいなくなるかもしれない。しかし仕事がなくなるということではなく、もっと高い次元の仕事が生まれるということ。AIによる自動化は既存システムの保守に8割のIT予算を使わなければならない状況を変え、8割をイノベーションに使うことができるようにする可能性を開くのだ」と力を込めた。

 なお、Oracle Open World 2018については週刊BCN紙上で詳報する。(本多和幸)
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外部リンク

米オラクル=https://www.oracle.com/index.html

日本オラクル=https://www.oracle.com/jp/index.html