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ITベンダーの製品開発の常識を変える――SAPジャパン
2018/08/09 09:00
週刊BCN 2018年08月06日vol.1738掲載
パートナーに有利なISV/OEMプログラムを訴求
今やSAPは非ERP企業セミナーでは、SAPジャパンの安部勉・OEM営業本部シニアアカウントマネージャが、「SAP ISV/OEMプログラム」について基調講演した。冒頭、安部シニアアカウントマネージャは「現在のSAPは、すでにERPの会社ではない」と強調。グローバル大手のERPベンダーとしてイメージが根強い同社だが、近年は事業構造の転換が進んでいることを示した。2016年の業績では、新規売上高の70%をERP以外のソリューションで稼ぎ出した。この非ERPソリューションには、AIやIoT、ブロックチェーンといった最新機能やアナリティクス、データベース(DB)などのアプリケーション、アプリケーションの開発から運用までを包括的にカバーするPaaS「SAP Cloud Platform」などが含まれている。安部シニアアカウントマネージャは、「パートナー企業は、これら非ERPソリューションをOEMプログラムを通じて効果的に利用することができる」と述べ、同プログラムを解説した。
利用形態は二つに分けることができる。一つは、パートナーのソリューションの中にSAP製品を組み込んで提供するモデルだ。例えば、アプリケーションにSAPのDBエンジンを搭載する用途が想定される。二つめは、バンドル/アドオン型のモデルで、こちらはパートナーのソリューションとSAP製品とを組み合わせて販売する。安部シニアアカウントマネージャは、「パートナーが初期投資を極力抑えて、迅速にビジネスをスタートできるように設計されており、SAPが用意している通常の『ライセンス再販売パートナー契約』や『導入支援パートナー』とは著しく異なる大変有利なプログラムだ」と強調した。
従来と一線を画すパートナープログラム
例えば、全ての開発・デモ・テスト用ライセンスをほぼ無制限で利用でき、SAP製品の再販の場合だと必要な営業、SE認定資格や保守認定資格の取得が不要となる。製品開発サポートもSAPのプロフェッショナルが支援する。さらに、パートナーがSAP製品を組み込んだ自社製品を販売・サポートする際には、エンドユーザーとSAP間でのライセンス使用許諾も不要。これは日本国内だけでなく、グローバルでも適用される。また、安部シニアアカウントマネージャは、「契約に関してSAP側がパートナーにコミットを求めることもない」とつけ加えた。
OEMパートナーになる条件は、販売する自社製品の知的財産権(IP)を有していること、OEM提供されるSAP製品を自社製品と必ずセットで利用すること、顧客へのサポートを直接提供できることの三点。すでに自社商材をもつISVやSIerにとってハードルは高くない。実際、グローバルでは約2000社、日本でも100社近くが同プログラムを利用している。
講演の最後に安部シニアアカウントマネージャは、OEMプログラムの活用メリットをあらためて訴えた。自社ソリューションに組み込んでいるDBをSAP製品に変更することでコストを低減したり、SAP製品をバンドル提供することで付加価値の向上や売上高の拡大を実現できる可能性があると強調。さらに、SAPの最新機能を活用した革新的なソリューションを開発することで、新たな市場に参入する道が開けることもあると伝えた。
日本でも革新的ソリューションの開発事例
続いて、後藤健司・OEM Presales APJ シニアソリューションスペシャリストが登壇し、OEMプログラムを活用したムラタシステム(石山敏彦社長)の事例を紹介した。
同社は、京都に本社を置く機械メーカー、村田機械のSI子会社で、配送センターや工場向けに、物流自動化システムの設計・開発や保守サポートを手がけている。
IoTを取り込んだソリューションを開発して、顧客に新たな価値を提供することを目指し、豊富な製品群やグローバルでの実績、デザイン思考を取り入れたイノベーションを支援する仕組みをもつSAPと提携。自己管理型RDBMS「SAP SQL Anywhere」とSAP Cloud Platformを用いて、IoTソリューション「SMART搬送設備点検システム」を開発した。これは、配送センターや工場のマテハン設備の搬送情報をSAP Anyware上に収集・記録し、SAP Cloud Platformのダッシュボードで経路の状態を可視化するシステム。コンベア搬送装置の異常傾向を低コストでリアルタイムに把握できる。同社では今後、得意領域の情報制御技術を組み合わせることで、工場や配送センターの自動搬送の効率化や予防保全などの管理強化に発展させていく方針だという。
最後に後藤シニアソリューションスペシャリストは、「ぜひOEMプログラムをご活用いただきたい」と参加者に伝え、講演を締めくくった。
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